いつきも、干汰も、大角も、過去を乗り越えるために動いている。
俺は決心し、干汰と大角に頷いてみせた。
「わかった。俺はいつきの意識を引っ張り上げる。勾玉の方は頼んだぞ」
強く頷き返したふたりは、すぐに部屋を出ていった。
代わりに部屋に入ってきたのは、驚くことに、ふたつのタブレットを手にした豊受比売さんだ。
天照様が楽しそうに目を見張る。
「あららぁ? 珍しいじゃないの~」
「ほ、本当は自分の部屋にこもってたいんですけど、皆さんから連絡係を任されてしまったので。でも、いつきさんを助けたい気持ちは皆さんには負けませんからっ!」
豊受比売さんは、八咫鏡に目覚めた千枷の姿が映っているのを見てから座卓にタブレットを並べて置いた。
画面に地図が映し出され、よく見ると三つ、小さなアイコンが動いている。
ひとつは内宮の御手洗場にあり、もうひとつはおはらい町を抜けていくところだ。
さらにもうひとつは、たった今五十鈴川駅の近辺で止まった。
「それはなんだ?」
「これは、以前、司天寮の阿藤さんにいただいた追跡アプリです。司天寮の皆さんは式神を飛ばしてるようなんですが、今回はそれぞれに神鶏を遣わせて、タブレットで様子を見れるようにしました」
話ながら五十鈴川駅付近にあるアイコンをタップすると映像に切り替わる。
民家の玄関口で、おっとりと首を傾げるのはいつきの友人、桜乃だ。
『冷泉天皇様の使った勾玉のお話のかしら?』
朝霧は興奮したように『そう、それだわ!』と両手を合わせる。
『保管されている場所ってわかるかしら?』
『ええっと、本には島路山のどこかだと書かれていましたけど……』