『最期の時まで時間がない。今の要領で俺の神気を辿りこっちに戻れ』
「や、やってみる。でも、その前に伝えないといけないことがあるの」
『勾玉だな? こっちでも鏡に映って確認できた。だが、どこにあるか見当もつかない』
呪詛を増幅させている呪具が勾玉と判明しても、場所がわからなければ祓いにもいけない。
でも、私にはひとつ、心当たりがあるのだ。
『へぇ~。歴代の天皇様の。何か面白い逸話はあった?』
『そうねぇ、面白いというか、少し切なくて恐ろしげだったから印象に残っているものはあったわ』
『どんなの?』
おはらい町、五十鈴川沿いのカフェを出てさくちゃんと交わした何気ない会話。
『ずっと昔の天皇様がね、愛した女性を繋ぎ止めるために狂って殺してしまうのだけど、魂を自分の元に留める為に使った呪具が今でも現存していて、伊勢にあるって逸話よ』
これが、冷泉天皇と千枷のことを示しているのであれば。
「さくちゃんなら場所がわかるかもしれない。ミヅハ、さくちゃんに」
呪具が勾玉であるのか、もしそうであればどこにあるか知っているかを聞いてほしいと、そう続けるつもりだったが、まるで邪魔するように意識が朦朧とし始める。
「な……に……急に……」
『いつ……く戻……お前の……危ない』
焦るようなミヅハの声が途切れて聞こえる。
ミヅハの気配を辿って自分の体に意識を戻さなければと思うのに、抗いがたい力に引きずられるように、私は……。
「斎王様!?」
その場に倒れた。