「謙遜を。少しどころではない活躍だった。都にいれば良い地位に立てるほどだよ」
「褒め過ぎですよ。それより縁様にお願いが……」
「千枷殿、縁様に対して気軽にものを頼むなど」
「いい。千枷殿、なんなりと」
兼忠様を制して、縁様が微笑む。
「妖狐様をお祀りしてほしいんです」
「なるほど。ならば、都に戻った際一切を清明に頼んでおくよ」
「ありがとうございます!」
嬉しさに興奮したのがいけなかったのか、眩暈が起きてふらついた私を龍芳の腕が支えてくれる。
「歩けないだろう? おぶっていくから、掴まれ」
「ごめんね、龍芳」
「何を謝るんだ。お前は頑張ったんだ。これくらい当たり前だろ」
ほら、としゃがみ込んだ体勢で背を見せた龍芳。
今度は「ありがとう」と告げて彼の背に乗らせてもらう。
「重くない?」
「どうだろうな。まあ問題ない」
「……そこは嘘でも重くないって言うところよ。もう、乙女心がわかってないんだから」
「冗談だよ。軽いよ」
龍芳が笑って、張りつめていた空気が和んだ。
やっばり、私はこの人が好きだ。
逞しい肩にそっとしがみつき、背中から伝わる龍芳の優しい体温に安堵の息が漏らす。
すると縁様が「では、戻ろうか」と元来た獣道へと引き返し、私と龍芳は祠に一度手を合わせてから追いかけた。
そして、ミツ様の祠へと再びやってきた私は、龍芳に支えられながら立つ。
ミツ様の顔色は心なしかよくなっており、私は安堵した。