この特殊な体質は生まれた村の人たちだけでなく、実の両親からも気味悪がられ、疎まれ、私は……五つの時に捨てられた。
 泣き疲れ、歩き疲れ、途方に暮れていた私を見つけてくれたのが龍芳のじじ様だ。
 じじ様は私をこの清水村に連れて帰り、両親のいない龍芳と一緒に私を育ててくれた。

 神やあやかしが視える私を、じじ様と龍芳は気味悪がったりはしなかった。
なぜならば、じじ様も私と同じく彼らを視ることができるからだ。
 龍芳にはその力は受け継がれてはいないけれど、彼は信頼するじじ様の視えるものを疑わず、じじ様お手製の薬を煎じる手伝いをしていた。
 お世話になっている私も見様見真似で手伝い、なるべく村の人たちに白い目で見られないよう気をつけながら生活をしていたのだけれど……。

 十を過ぎた頃、ついに村の人々に知られてしまったのだ。
 畑仕事の最中、いつも優しくしてくれるおばさんの悲鳴が聞こえて駆け付けると、川に【小豆洗い】というあやかしが現れ、おばさんは恐怖に腰を抜かしていた。

 目は皿のように大きく、狐の如く尖った口元から覗く鋭い牙。
 伝承では、小豆を洗う音や歌で気を引き、人を崖や川に落とす恐ろしいあやかしとされているが、現れた小豆洗いは温厚な性格で、さらに言えば私の知り合いだ。
 おばさんの悲鳴に驚愕し岩陰に隠れ、しゃがみこんでいた小豆洗い。
 彼は私を見るなり『ち、千枷の知り合い?』と話しかけてきたものだから、おばさんは信じられないものを見る目を私に向け、助け起こそうとした私の手を払いのけると逃げるように去っていた。

 清水村は小さな村だ。
 私の噂はすぐに広まり、気味悪がられ、皆からあからさまに距離を置かれた。
 幸いだったのはじじ様と龍芳に対しては、村の人たちの態度がそこまで変わらなかったことだ。
 でも、それは今だけかもしれないと考え、私は村のはずれに自分用の家を構えた。