天照様が「八咫鏡には通信機能なんてついてないんだけど」と話し腕を組んだ時、いつきにあった瀬織津姫の視線が俺へと持ち上がり捉える。

「どちらの子も特別な力のある子だからってのもあるだろうけど、ミヅハの声が届いたのは、前世でふたりに深い繋がりがあるからかもしれないね」
「そうねぇ。とりあえず、いつきちゃんの意識が戻るのを待ちつつ、こっちで手がかりを探すことにしましょうか。ただ……」

 天照様が言葉を切り、映像の向こうにいる彼女へと真剣な眼差しを向けた。

「最期の時を迎える前にはどうにかして意識を戻せるよう、ミヅハはいつきちゃんにちょいちょい声をかけてあげて。あっちに持っていかれた状態で殺されたら、いつきちゃんがどうなるかアタシにも予測がつかないわ」

 最悪の場合は、いつきが死ぬかもしれない。
 天照様は言葉にこそしなかったが、その危険性が高いことを示唆していた。
 いつきを失うかもしれない。
 あの時と同じように、何もできずに。
 そんなのはごめんだと、俺は立ち上がった。

「須佐之男さんに頼んで、いつきに俺の命を与える」

 発した言葉に、ふたりの表情が厳しいものに変わる。
 瀬織津姫は「なるほど、これか」と零してから頭を振った。

「やめときな。呪詛付きの魂を相手にするには年若いあんたには危険だ。何よりいつきは望んでない。ここに駆け込んで、必死になって過去を覗くという手段を選んだのも、あんたに無茶させたくないからだ」
「だが、このままでは」
「ミヅハ、あたしがあんたに願ったのは、命を賭すことじゃない。いつきを救うことだ。救って、約束を果すんだよ。あんたたちはまた死に別れる為に生まれ変わったんじゃないだろ」

 叱咤され、白くなるほど強く拳を握る。

 ──救えずに、約束をした。
 一方的で身勝手なそれが確かに彼女に届けられたことは、約束を託したあやかし……大角から聞いている。
 受け取った彼女は、手紙を抱き締めながら崩れ落ち、涙を流し、俺の名を呼び続けていたとも。

 無茶をすれば、俺はまた……愛してやまない者を、残して逝くことになるのか。

「……手がかりを探して、あいつを必ず追い出すぞ、いつき」

 追い出して、今度こそ救ってみせる。
 胸の内で誓い、俺はまたいつきの名を呼んだ。