「ほ、本物ですか!?」
「もちろんよ」
「アッハッハ! さすが姉さん、アクティブだね」
「いや、アクティブ過ぎて心配になるレベル!」
内宮で厳重に扱われているものが、天照様の一声でいとも簡単に取り出されたのだ。
皇族も滅多なことがない限りは見れないだろうものを、まさかこんな突然目にすることになろうとは。
使いたいと願ったのは私だけれど、戸惑う気持ちが止まらない。
「んで、前世を見たいのよね? 瀬織津、いい?」
八咫鏡を手にする天照様が、座布団の上に座る母様に確認を取る。
「いつき、本当にいいのかい? 前世を見れば、知りたくなかったこともあるかもしれない。辛いものを見るかもしれないんだ」
前世の私が迎えた結末。
それが悲惨なものであることはもちろん承知している。
とても直視できる光景ではないかもしれないけれど……。
「そうだとしても、できることはやっておきたいの。じゃないと、ミヅハが無茶をしてしまうから」
「ミヅハが?」
母様が眉間に皺を寄せ、首を僅かに傾げた。
本当は話しておくべきなのかもしれない。
でもミヅハが、母様がしたことをなぞらえる決意をしていると告げてしまえば、母様が心を痛めるのではと思うと言えず、私は「私の為に、必死になってくれてるの」とだけ伝えた。
「愛ねぇ~。素敵じゃない」
「愛じゃなくて、後悔と役目に囚われてるんだと思います……」
八咫鏡を抱き締めてうっとりする天照様に苦笑して答える私を見た母様は、短くため息を吐く。
「あの子はいつきのことになるとバカみたいに真面目だからね。無茶をされるのはあたしも困るし、いつきに知る覚悟があるならかまわないよ」
「ありがとう! 母様!」
「アタシたちも一緒に見て探してあげるから、もしきつかったら無理はしなくてもいいわよ」
「天照様も、ありがとうございます」
勢いよく頭を下げると、ふたりは優しく微笑んでくれた。