司天寮にいいアイテムはなかったけれど、予想だとしても呪詛の話を阿藤さんから聞けて一歩進めたような気がする。
 ここでさらにもう一歩前進するには、さっきも思いついた過去を覗ける道具があることなんだけど、阿藤さんの言う通りそんな都合のいいものがあるわけがない。
 ならばせめて、私の前世の記憶を復活させることはできないのか。
 ミヅハのように前世の記憶があれば、何か気付けることがあるかもしれない。

 思い付いた私は、夜、仕事を終えて部屋に戻る途中、朝霧さんから母様と天照様が宿に戻ったことを聞くと、急いで着替えを済ませて母様の部屋に向かった。

「おかえりなさい! 母様、天照様も!」
「ただいま……って、なんだい、そんな勢いよく駆け込んできて」

 落ち着きがないねと呆れた口振りで苦笑する母様は、天照様と向かい合ってお茶を淹れている。

「ごめんなさい。急ぎで聞きたいことがあって」
「あー、それ、早く聞きたいわよね。でも、ごめんねぇ。粘って残って運よく高御産巣日神サマにも相談できたんだけどね、負担なしで祓うことは不可能だって言われちゃって」

 眉を下げて報告してくれた天照様は、まいったわねぇと続けて零すと溜め息を吐く。

 高天原に最初に現れた三柱の神の一柱、少彦名様の親でもある高御産巣日神様。
 高天原でも豊富な知識を持つであろう神様でも、いい手立ては浮かばず、それどころか『一度その者の魂を黄泉の国へ送り、そこで祓ってみるのはどうだ』などと提案したらしい。
 一度死を迎え、後に祓い、また生まれ変わるのを待てばいいと。
 天照様曰く、人と過ごしたことがほぼない方だから、考え方も感覚も違うらしい。