事故に遭った時に、力が復活?
なぜそう思ったのかという疑問は、口にする前に阿藤さんが話してくれる。
『黒いモヤ、覚えてるか?』
「はい」
忘れるわけがない。
両親が他界する原因になった事故で見たものだ。
今でも、あの禍々しいモヤに覆われたトラックの姿は鮮明に思い出せる。
『あいつが何だったのかは未だにわからないままだ。だが、もしもそいつが、嬢ちゃんらがあるかもしれないと思っている呪具によって発生したものなら……』
「私を狙って現れ、私の中にあった呪詛の力を増幅させた?」
確かに、それなら納得がいく。
事故に遭うまで特に体に不調を感じてはいなかったし、事故の時に力を得ていたなら母様が祓えなかったのも頷ける。
『あくまでも予想だがな。ただ、そうだとしても、なぜそのタイミングだったのかはわからねぇ。何が起こったか、そん時の状況を見れたら手がかりもつかめるかもしれないが……』
「司天寮に、過去を覗ける道具なんて……」
『そんな都合のいいもんがほいほい出せるのは、青いネコ型ロボットくらいだろ』
ガハガハと笑った阿藤さんにつられ、私も声を出して笑った。
『力になれなくてすまんな。一応札はそっちに送っておく。使えそうなら使ってくれ』
「ありがとうございます!」
『あがけよ、嬢ちゃん』
「もちろんです」
ミヅハのこともあるし、悲観的になってはいられない。
もう一度お礼を言ってから通話を終えると、私は息を吐いた。