永遠にも近い時を生きる神々と同様、近い存在のあやかしにも寿命はない。
 けれど限りはあり、穢れや怪我により命を落とす。
 また、邪神や妖邪に身を堕とし現世にいれば、司天寮に所属する陰陽師たちの手により調伏された可能性もある。

「とりあえず、呪具にせよあやかし化にせよ、調査は必須だね」

 進展のない今、私たちができることは呪詛を祓うための手がかりを見つけることだ。
 ミヅハが「そうだな」と頷いたところで、昼間、休憩室で皆と話したのを思い出す。

「そうだ! カンちゃんたちも協力してくれるって」
「干汰たちが? 話したのか?」
「昨夜、偶然通りかかった夕星さんに聞かれていたみたい」

 休憩中、どのように話していたかを簡単に説明し、それぞれに動き始めてくれていることを伝えると、耳を傾けていたミヅハは「そうか……」と呟いた。

「なるべく巻き込みたくはないが、時間もないし助かるな」
「うん。心強いよね。ひとまず、引き続き調べつつ母様たちの帰りを待とう」
「ああ。ところで、体調はどうだ?」
「今日は特に。めまいも息苦しさも出なかったし、大丈夫」

 そう、今のところは大丈夫だ。
 けれど、いつどうなるかわからない不安はずっと胸の内にあり、それは油断すればあっという間に重く圧し掛かる。
 でも、弱音になんて吐いている暇はない。
 俯いていたら、大切なものを見過ごしてしまう。
 刻々と迫る命の終わり。
 その恐怖に負けないよう、膝の上で拳をきつく握る。

「ミヅハ、心配してくれてありが──」
「こんな時まで強がるな」

 真剣な眼差しと気づかわし気な声に、私の言葉は最後まで紡がれることなく行き場を失った。