「前世の話は、誰から、どこまで聞いたんだ?」
「ミヅハに、呪詛が反応すると困るからって言われてさらっとだけ。教えてもらったのは、千年以上前、私は斎王で伊勢神宮に奉仕していて、ある日、呪詛を植え付けた男の人に殺された。その頃、ミヅハは、カンちゃんの友人でもあって、私を救うことができなかった私の幼馴染だった……という感じです」
「幼馴染の名前は、若旦那から聞いたか?」
大角さんの低く落ち着いた声でさらに尋ねられ、私は緩く首を横に振った。
「カンちゃんから聞いた名前の人であるかは、私から確認しました。でも、呪詛の反応が怖いからって頷いてはくれなかったんです。何せ、その名前をミヅハに向かって口にしたら呪詛が発動したっぽくて」
だから、むやみに口にしないように気をつけていると説明すれば、大角さんと朝霧さんがカンちゃんに厳しい目を向ける。
「ニャ! 干汰、お前は余計なことを」
「わ、悪い! まさかこんなことになるとは。姫さん、ごめんな」
「ううん。むしろ、色んなことがわかってきてスッキリしてるから気にしないで」
「姫さん……くうっ……ありがとうな!」
「もうっ、いつきちゃんはお人よしすぎるんだよ」
朝霧さんが呆れたような、それでいて愛しむような瞳で私を見つめる中、カンちゃんが「しかし、そうか……若旦那はついに話したのか」と、感慨深げに零した。
そして「俺もなんだ」と告げる。
「え?」
「前に酔って話ただろ? 助けてもらったのに、助けられなかったって。あれは、姫さんの事だ」
「えっ!?」
「オレだけじゃない、大角もそうだ。昔の姫さんに救ってもらって、今がある」
そうなんですかという視線を大角さんに送ると、大角さんはこくりと頷いた。
「夕星さんたちは?」
ふたりと同じように、もしかして前世の私と面識があったのではと思い尋ねる。
しかし、夕星さんと朝霧さんは頭を振って否定した。
「僕や朝霧は前世の君と面識はないよ。でも、あやかしの間では有名な話だ」