『お願いだ。やっと会えたんだ……いつきを助けてあげられる方法があれば教えてよ!』
斎王(さいおう)の……の少女、か……』
『いつき……いつき……今度こそ、助けてやるから』
『そうだね。ここでいつきを助けなきゃ、……がハッピーエンドを願ってあんたに二代目を任せた意味もなくなる』

 瀬織津姫は瞳に強い意志を宿し、朦朧とする私を抱きかかえた。

『ミヅハ、あんたはなにもしなくていい。あたしがいつきを助けてやるよ』

 必ず助けるから、待ってな。

 その声が聞こえてから後の記憶は私にはない。
 けれど、次に意識を取り戻した時、私は天のいわ屋の一室にいた。
 少し重みのあるあたたかな掛け布団の下で、見知らぬ天井をぼんやりと眺める私に気付いたミヅハが、震える声で『よかった』と言うと、ボロボロと大粒の涙を零した。
 そして、しゃくりあげながら、瀬織津姫が私の命を救ってくれたのだと教えてくれたのだ。

 両親を失い、身寄りをなくした私は、以来、瀬織津姫が母親代わりとなり今日まで育て上げてくれた。
 時に厳しく、時に優しく、時に豪快に。
 天のいわ屋で働く従業員たちや訪れる宿泊客たちに見守られ、私を助けてと懇願してくれたミヅハと共に、人の時間の中で人として成長しながら。