「え、え、待って待って。殺した揚げ句さらに呪詛まで? その人、前世の私をすっっっごく恨んでたってこと?」
「恨んでいたのかはわからない。だが、かなり執着していたのは確かだ」
執着と聞いて想像するのはストーカーだ。
時々、殺人事件を起こし世を騒がせたりするけれど、千年前の私もストーキングされていたのだろうか。
千年経っても残る呪詛なら、執着だけでなくやはり恨みのようなものも持っていたのかもしれない。
「つまり、千年前の私は斎王と呼ばれる職についていて、その私を手にかけ呪いまでかけた人がいる。それが転生してもなお私を困らせてるってこと?」
「その通りだ」
「ええぇ~、めっちゃ迷惑」
いやしかし、そうされる原因を作ったのが前世の私なのだとしたらいた仕方がないのかもしれない……が、だとしても殺したり呪ったりはやりすぎな気がする。
それとも、昔はそんなのが当たり前だったのだろうか。
末代まで呪ってやる……なんてセリフを時代劇とかで聞くこともあるくらいだし。
「というか、どうしてそんなに詳しいの?」
母様たちに適任だとか、ミヅハが答えるべきだとか言われていたけれど、確かに詳しいので納得だ。
私が知らないだけで、実は、伊勢斎王の歴史についてのスペシャリストだという以外な一面でもあるのかもしれない、などと想像していたのだが、ミヅハの瞳が悲しそうに揺らいだ。
「詳しいのは……俺も、その時代に生きていたからだ」
「え? そうなの? 神様として?」
二代目水神になる前の話だろうかと首を傾げてから気付く。
ミヅハは神様としては年若く、まだ何十年も生きてはいないはずだ。
何せ出会った頃は、ミヅハも子供の姿だったのだから。
では、どういうことなのだろうかと再び首を傾げた時、思い出した。
幼いミヅハが悲痛な声で零した言葉を。