役目。
事務的で固く冷たい響きに、心がズンと重くなる。
つまり、ミヅハは母様との約束を守るため、役目だから私を好きになろうと努力をしてくれていたのだ。
そっけなくする必要がなくなったというのも、役目だから。
寿命が尽きそうだという状況で、せっかく再熱した恋心が早くもブロークンしそうで泣きそうだ。
しかし、じゃあ他の神様と結婚するからいいやという気持ちにもなれず、むしろこうなったら絶対にミヅハと結婚してやると謎の気合スイッチが入る。
「でも、今のままでは呪詛が邪魔して私たちは一緒になれないのよね……」
「……そうだ。そこで、さっきいつきが口にした疑問に繋がる」
いよいよ答えが得られるのだと、私は背筋を正してミヅハを見つめた。
灯篭の灯りに柔らかく照らされたミヅハの横顔。
彼は一度だけゆっくりと瞬いて、中庭の景色から私へと視線を移した。
「瀬織津姫と少彦名殿の話から察すると、いつきに巣食う呪詛は、千年以上前、ある男の怨嗟によっていつきの魂に刻まれたものとみて間違いないだろう」
「魂に……」
私の体ではなく、心臓でもなく、魂に呪詛が刻まれている。
なんとなく右手を心臓の辺りにそっと手を当てると、小さく弾む鼓動を感じた。
「過去になにがあったの?」
「……簡潔に話すと、今から千年以上前、いつきは斎王という神の意を受ける依代の役目を担い、伊勢神宮に奉仕していた。だがある日、ひとりの男によって殺された。呪詛は、その男が植え付けたものだ」
「こ、殺されたっ!?」
呪詛だけでも物騒な話なのに、サスペンス劇場まで起こっていたとは。