ミツとは、先代水神様のあだ名だ。
さっきの話の中で『ここでいつきを助けなきゃ、ミツがハッピーエンドを願ってあんたに二代目を任せた意味もなくなる』というセリフがあった。
昨日も天照様から『ただ……そうねぇ、親友の願いを繋ぐ為に無理をしたから、それが今の瀬織津の体に負担をかけてるのよ』という話を聞いている。
母様の体調に関しては謎が解けたけれど、なぜ、先代水神様はハッピーエンドを願いミヅハを二代目にしたのか。
というか、会話の節々に気になるフレーズがいくつも入っているのだ。
「あの、斎王の生まれ変わりとか、今度こそ助けるとか、千年経ってもまだ欲するとかって一体どういう意味ですか?」
覚えている限りを声に出して誰ともなしに問いかけると、皆の視線が一斉にミヅハに注目した。
母様が「ミヅハ」と呼びかける。
「これについてはあんたが答えてやるべきだろう?」
自分たちよりも適任だと任せると、マイペースな須佐之男様が「立ったままで少々疲れたな」と座卓を囲む座布団に正座した。
天照様も「真面目な話ばかりで疲れたし、お茶でも淹れてひと息いれましょうよ」と提案し、少彦名様まで「茶菓子はあるか」と寛ぎ始める。
そうだ。
今までの流れが真面目過ぎて忘れかけていたけれど、この場にいる神様たちはそれぞれの個性はあれど皆マイペースな人たちだった。
皆で座卓を囲み、湯呑を手にする神様たちを見て、なんという空気クラッシャーだと呆れてしまうが、けれどその和らいだ空気のおかげで、私の肩に入っていた余計な力が僅かに緩む。
半ば強引に任されたミヅハは、仕方ないといった様子でそっと溜め息を吐くと立ち上がった。
「いつき、中庭で話そう」
「うん」
ミヅハはなかなか食べられないプリンを母様の部屋の冷蔵庫に入れると、私を中庭に連れ出す。