少彦名様でも祓えないなら、どうしたらいいのだろう。
というか、この呪詛がなぜミヅハだけに反応するのかもさっぱりわからないままだ。
単に相性のようなものがあるのかもしれない。
もしくは、龍芳という名に反応し呪詛が発動したというなら、ミヅハも私の前世に関わっている……とか?
それなら、私と同じタイミングで体に異変をきたしている母様も?
あれこれと考え込んでいると、母様が溜め息を吐いた。
「困ったもんだね。呪詛を祓わない限りミヅハが触れられないんじゃ婚姻は結べない」
「どうして?」
「そりゃあんた、口づけをしないとならないからさ」
「くっ……!?」
口づけって、つまりキスということで、私とミヅハがキスをしない限り婚姻関係にはならない?
いや確かに教会で式を挙げれば誓いのキスはするけれど!
「そ、それは必須?」
恥ずかしさにミヅハの方を見ないようにしながら誰ともなしに訊ねると、天照様と母様、そして少彦名様までもが「もちろん必須」と声を重ねた。
さらに説明を続けるのは天照様だ。
「あのね、人間みたいに紙切れ一枚で結ぶものではないの。神には戸籍というものはなくてね、夫婦となるには立ち合う神の言祝ぎのあとに唇で神気を与えて繋ぐのよ」
「そ、そうなんですね……」
ミヅハは知っていたのだろうか。
二代目とはいえ水神だし、とっくに知っていたのかもしれない。
知っていて、いつきがいいと言ってくれていたかと思うと恥ずかしくてたまらず、茹ってしまいそうな熱い顔を俯かせる。
すると、私の耳に届いたのは天照様の静かな声。
「ねぇ瀬織津。罔象女神の願いを繋げたいアンタの気持ちはわかるし、アタシも同じ気持ちだけどね、こうなっては別の神と婚姻を結ぶしかないわよ」
緊急事態だものと告げた天照様に母様は肯定も否定もしない。
ただ、迷うように瞳を揺らし、私とミヅハを交互に見つめた。