「う……ぁ……」

 両手で胸を押さえつけるようにして堪えようとするも、ドクリドクリと繰り返す鼓動と共にキリキリと痛みが締め付ける。
 たまらず背を丸めて畳の上に倒れ込む私の耳に、「いつき!」と驚きに染まるミヅハの声が聞こえた。
 彼が急ぎ私の側に膝をついた直後、天照様が焦りを滲ませ「瀬織津!」と母様を呼ぶ。

「あたしは……大丈夫だよ。引きずられて少し苦しいだけだ。だから、早くあの子を」

 視界の隅に、天照様に支えられた母様が胸元を押さえて座っている姿が見えた。
 また、母様が私と同じタイミングで苦しんでいるのを目の当たりにして、もしかして私の内には随分と前から呪詛がいて、そのせいで母様まで苦しめていたのではという予想が一瞬頭を掠める。
 ただ、そうであったとしてもなぜ連動しているのかがわからず、むしろそんなことを冷静に考え続ける余裕もない。

「あぁ……ぐ……」

 痛みから生じる息苦しさに身体が震え初めて、ヘタに私に触れることのできないミヅハが「少彦名殿!」と助けを求めた。

「わかってるよ。いつきの姫、もうしばし耐えてくれ」

 ミヅハに急かされた少彦名様は、着物の袂から仁丹を取り出すと、横に倒れている私の口に頬り込んだ。
 それは僅かに苦みを持ち、しかし仁丹が溶けてなくなると味もまたすんなりと消える。
 同時に、私の胸を締め付けていた痛みも段々と薄れていき、呼吸も元に戻ってきた。