ミヅハと結婚できるのは嬉しいのか。
 ミヅハのことが好きなのか。

 ……昔は、好きだった。
 神様だとか人間だとか、そんなこと特に気にもせずにただミヅハが好きだった。
 でも、そっけなくされてから少しずつ想いを閉じ込めていって……幼馴染のような関係でいいと、気持ちに蓋をしたのだ。

 捨てたわけでも失くしたわけでもなく、心にはずっとあった。

「ときめいたりしない?」

 だから、ミヅハの態度を寂しく感じて、嫌いにもなれず許せていたのだろう。
 さくちゃんに聞かれて、そのことにようやく気付けた。

「する……。本当はまだ……好き、なのかも」

 ずっと閉じていた蓋を一気に開けるのが怖くて、そっと確かめるようなずるい言い方で応えると、さくちゃんはクスッと笑う。

「素直じゃないのね、いっちゃん。そんなに顔真っ赤なのに」

 言われなくてもわかっている。
 私の頬は絶好調に熱を持ち、顔どころか体まで体温が上昇していた。
 それを鎮めるように、ミルクをたっぷり入れたアイスコーヒーを飲む。
 コクリコクリと冷たいコーヒーを喉に流し込むと、さくちゃんは五十鈴川をじっくりと眺めてから、私に視線を戻すと言った。

「理由は何であれ、幸せになってね、いっちゃん」
「うん」

 ──ああ、やっばり私、さくちゃんと出会えて本当に良かった。