今日、世界は多方面に崩壊が進んでいた。環境破壊もそのうちの一つであるし、人間同士の問題もそのうちの一つであった。様々なバランスが同時に崩れてしまえば、人類滅亡だって馬鹿げた話ではない。それを各国政府は問題視していて、様々な議論が繰り広げられていた。
そして日本政府とアメリカ政府が掲げた一つの計画が、これだった。
崩壊する世界を止める為に、政府の極秘機関である研究所で大量の人間型ロボットを生産する計画が進行している。
彼・彼女らは普通の人間と同じように生きるが、崩壊する世界を止める為と言う使命のもと、普通の人間に害になるものを積極的に排除する。一般人にロボットということさえばれなければ、その手段は問わない。
ロボットには普通の人間と同じような思考をするように緻密に作られているが、プログラムのもと『排除すべきか否か』を判断する。そのプログラムには、愛ゆえの排除は登録されていない。
あくまで世界の崩壊を止めるためだ。個人のために動いているわけではない。個人のための人工知能ロボットを生産している企業なら、他にいくらでもある。
人間と違い、ロボットであれば仮に破壊されても無生命なので問題ではない。ロボットなら修復可能であるし、代わりだっていくらでも作ることが出来る。
ただ、データが取れないことには運用するには危険すぎる。そこで優秀な人材の作ったロボットをいくつか世に送り出し、先ずは個人のために動かせる。
萌葱翠、製造番号MN-601。西尾碧李が開発したロボットだ。
萌葱翠の脳に送られる情報は碧李のパソコンから管理できるので、碧李は学校での全てのやり取りを把握していた。勿論、翠が施設に戻ってきてから直接データを取り出すことも毎日欠かさない。
翠が任されたのは、黒木梨華だった。
実験段階で人の目が多すぎると、失敗した時に取り返しのつかないことになる可能性が高くなる。そのため、少し鄙びたこの町を選び、守る必要性がありそうな人材を探した。結果、黒木梨華と決まった。