「おい、おまえはここで何をしている。そしてその手に掴んでいるものは一体なんなのだ」
青い衣を着た男性は、厳しい目つきで私を睨んでいる。どうしよう、お役人様なの? 都の料理人になる前にここで捕まるの? そんなのイヤだ! 口に残った饅頭をのみこみながら私は必死に考えた。
「なにって、饅頭ですけど」
さらりと答える。何がおかしいの? といわんばかりに平然と。
「そんなことはわかってる。それをどこから盗み出したんだ、と聞いている」
「盗んでなんかいません。龍神様にいただいたんです。ここにある饅頭を食べて、都の調理法を学べって。私、料理人ですから」
かなり無理がある気がするけど、これしかない。盗んだって認めたら終わりだ。確かに私はしてはいけないことをしたけど、都の人たちも私に冷たすぎると思う。だから饅頭をひとつぐらいもらったっていいよね? 賃金をもらえたら、饅頭分と合わせて三倍返しでお供えするつもりだったし。
青い衣の男は、怪訝そうな顔で私をみている。
「おまえが料理人? 女なのに?」
「女だって料理人になれます。これまで料理人として働いてきましたから。力では男性に劣るかもしれませんが、他で補ってみせますし自信もあります」
「ほぅ。大きく出たな」
青い衣の男はにやりと笑った。正直、そこまでの自信なんてない。でもここは強気でいかないと、きっと突破できない。
「よかろう。そこまで言うなら、饅頭をくれた龍神様にお礼として料理をお出しせよ。気に入れられれば、龍神の料理人になれるぞ」
ん? 話が変な方向にいってない? 龍神の料理人って一体なに? そんな名前の店があるの?
考え込んだ私の隙を見計らうように、青い衣の男性は私をひょいっと担ぎ上げたのだ。「ひぇ、人さらい!」と叫ぼうとした時だった。青い衣の男は、ふわりと宙に浮かんだ。そしてそのまま青い空へとみるみる昇っていく。肩には私をひょいっと乗せて。どんどん遠くなる地面に私はもう唖然茫然。
「わ、わたし、飛んでる! いや、飛んでるの私じゃなくて、連れ去られてる! たすけて~!」
「人聞きの悪い。おまえはこれより龍神が住まう天空城へ行くのだ。そして城の主様に料理を出してもらおう。料理人なのだろう、おまえは」
「料理人ですよ! 料理人ですけど、雲の中で料理なんてできません!」
「天空城は貧相なところではないぞ。楽しみにしているがいい」
青い衣の男は片腕だけで私をがっちり掴み、全く放してくれそうになかった。やがて地面は全く見えなくなり、空へ空へと昇っていく。受け止めきれない現実と連日の疲れで、私の意識はゆっくりと遠のいていった。
青い衣を着た男性は、厳しい目つきで私を睨んでいる。どうしよう、お役人様なの? 都の料理人になる前にここで捕まるの? そんなのイヤだ! 口に残った饅頭をのみこみながら私は必死に考えた。
「なにって、饅頭ですけど」
さらりと答える。何がおかしいの? といわんばかりに平然と。
「そんなことはわかってる。それをどこから盗み出したんだ、と聞いている」
「盗んでなんかいません。龍神様にいただいたんです。ここにある饅頭を食べて、都の調理法を学べって。私、料理人ですから」
かなり無理がある気がするけど、これしかない。盗んだって認めたら終わりだ。確かに私はしてはいけないことをしたけど、都の人たちも私に冷たすぎると思う。だから饅頭をひとつぐらいもらったっていいよね? 賃金をもらえたら、饅頭分と合わせて三倍返しでお供えするつもりだったし。
青い衣の男は、怪訝そうな顔で私をみている。
「おまえが料理人? 女なのに?」
「女だって料理人になれます。これまで料理人として働いてきましたから。力では男性に劣るかもしれませんが、他で補ってみせますし自信もあります」
「ほぅ。大きく出たな」
青い衣の男はにやりと笑った。正直、そこまでの自信なんてない。でもここは強気でいかないと、きっと突破できない。
「よかろう。そこまで言うなら、饅頭をくれた龍神様にお礼として料理をお出しせよ。気に入れられれば、龍神の料理人になれるぞ」
ん? 話が変な方向にいってない? 龍神の料理人って一体なに? そんな名前の店があるの?
考え込んだ私の隙を見計らうように、青い衣の男性は私をひょいっと担ぎ上げたのだ。「ひぇ、人さらい!」と叫ぼうとした時だった。青い衣の男は、ふわりと宙に浮かんだ。そしてそのまま青い空へとみるみる昇っていく。肩には私をひょいっと乗せて。どんどん遠くなる地面に私はもう唖然茫然。
「わ、わたし、飛んでる! いや、飛んでるの私じゃなくて、連れ去られてる! たすけて~!」
「人聞きの悪い。おまえはこれより龍神が住まう天空城へ行くのだ。そして城の主様に料理を出してもらおう。料理人なのだろう、おまえは」
「料理人ですよ! 料理人ですけど、雲の中で料理なんてできません!」
「天空城は貧相なところではないぞ。楽しみにしているがいい」
青い衣の男は片腕だけで私をがっちり掴み、全く放してくれそうになかった。やがて地面は全く見えなくなり、空へ空へと昇っていく。受け止めきれない現実と連日の疲れで、私の意識はゆっくりと遠のいていった。