子どもの頃、家族でお祭りに行ったとき、大人達が着ている色とりどりの浴衣に目を奪われていたわたしに、「浴衣の柄には意味を持つものもあるのよ」と、お母さんが教えてくれた。
幼いながらも興味を持ったわたしは自分なりに調べて自由研究の題材にまでしたので、今でもちゃんと覚えている。
蝶の柄はさなぎから蝶に羽化する様子から、復活や変化という意味がある。
それに長寿や不老不死という意味もあったはずだ。
恋愛面では、ずっと続くという願いがこめられているらしい。
長寿なんてまだ意識するような年齢じゃないけれど、恋愛面での意味は大切にしたい。
そして朝顔柄には、固い絆という意味がある。
友達や後輩を大切にする美輝にぴったりの言葉だ。
「私はフロントにいるから、お風呂あがったら声をかけてもらえるかしら?」
「わかりました。じゃあ、先にお風呂いただいてきます」
美輝がそう挨拶を残すと、わたし達は部屋へ戻った。
「浴衣まで用意してもらえるなんて、びっくりだね」
「うん、あの浴衣かわいいね、絶対美輝に似合うよ」
「琴音こそ、浴衣の蝶とトンボ玉の蝶が揃ってて、きっときれいだよ」
やはり女の子としては、お祭りで浴衣を着るのはとても楽しみだ。
早く袖をとおしたい気持ちを堪えながら、わたし達はいそいそと温泉へ向かった。