「婚約解消なんて私には関係がないし、謝らなくていい。今更遅すぎるし、もうどうでもいいから。話は終わり?」
冷たすぎる口調で切り捨てる。
「……後は沙雪の名前を勝手に使ったこととか……ごめんなさい」
雪香は青ざめた顔で、伏し目になりながら懺悔する。
「なんで私の名前使ったの?」
私は、軽蔑の目を雪香に向けた。
「……素性を知られたくなくて……遊んでるとお義父さんに知られたくなかったの」
「本当に? 実際は違う目的じゃないの?」
「え? どういう意味?」
雪香は困惑して聞き返して来る。視界の端に蓮の怪訝そうな顔が映った。
「雪香は前から私を嫌ってたそうね。ということは、 全て私に対する嫌がらせだったんじゃないの? 直樹にも雪香から近付いたそうだけど、それも私への攻撃だったんじゃない?」
「違う! 私そんなつもりじゃ……」
「違わないでしょ? 雪香が私についてどう言っていたか、直樹に聞いたわ」
「そ、それは……」
雪香は辛そうに顔を歪める。
「沙雪、佐伯直樹の言葉なんて信じるな!」
それまで黙っていた蓮が、たまりかねたように叫んだ。
「別に信じてないけど、雪香はもっと信用出来ない。蓮もね」
「……!」
蓮は驚愕したように息をのんだ。信じられないといった表情で私を見てる。
その視線に耐えられずに目を逸らした。
「……確かに直樹に沙雪についての文句を言った……でもそれは嫌いとかじゃなく、ただ妬んでの事だったの」
「なにそれ、嘘でしょ?」
雪香が私を妬むなんて、考えられない。
雪香が私の何を羨むというのだろう。私が持っていて雪香が持っていないものなんて無いのに……。
「私……子供の頃から義父の厳しい管理下にあった。いろいろと制限されて息苦しくて気がおかしくなりそうだった」
その話は以前蓮から聞いていた。
雪香の自由の無い暮らし。聞いた時は雪香を気の毒に思った。
でも今は、雪香に同情する気持ちより苛立ちの方が勝っている。
「私、自由な沙雪が羨ましかった。自立して何でも自分で決めて行動していて……すごいなと思ってたし、そんな環境にいる沙雪が妬ましかった」
「……私の環境が妬ましい?」
雪香の言葉に思わず笑いを漏らしてしまった。
確かに私は自由だけど、それは私には誰もいないし、何も無いからだ。
「どうしたの?」
冷たすぎる口調で切り捨てる。
「……後は沙雪の名前を勝手に使ったこととか……ごめんなさい」
雪香は青ざめた顔で、伏し目になりながら懺悔する。
「なんで私の名前使ったの?」
私は、軽蔑の目を雪香に向けた。
「……素性を知られたくなくて……遊んでるとお義父さんに知られたくなかったの」
「本当に? 実際は違う目的じゃないの?」
「え? どういう意味?」
雪香は困惑して聞き返して来る。視界の端に蓮の怪訝そうな顔が映った。
「雪香は前から私を嫌ってたそうね。ということは、 全て私に対する嫌がらせだったんじゃないの? 直樹にも雪香から近付いたそうだけど、それも私への攻撃だったんじゃない?」
「違う! 私そんなつもりじゃ……」
「違わないでしょ? 雪香が私についてどう言っていたか、直樹に聞いたわ」
「そ、それは……」
雪香は辛そうに顔を歪める。
「沙雪、佐伯直樹の言葉なんて信じるな!」
それまで黙っていた蓮が、たまりかねたように叫んだ。
「別に信じてないけど、雪香はもっと信用出来ない。蓮もね」
「……!」
蓮は驚愕したように息をのんだ。信じられないといった表情で私を見てる。
その視線に耐えられずに目を逸らした。
「……確かに直樹に沙雪についての文句を言った……でもそれは嫌いとかじゃなく、ただ妬んでの事だったの」
「なにそれ、嘘でしょ?」
雪香が私を妬むなんて、考えられない。
雪香が私の何を羨むというのだろう。私が持っていて雪香が持っていないものなんて無いのに……。
「私……子供の頃から義父の厳しい管理下にあった。いろいろと制限されて息苦しくて気がおかしくなりそうだった」
その話は以前蓮から聞いていた。
雪香の自由の無い暮らし。聞いた時は雪香を気の毒に思った。
でも今は、雪香に同情する気持ちより苛立ちの方が勝っている。
「私、自由な沙雪が羨ましかった。自立して何でも自分で決めて行動していて……すごいなと思ってたし、そんな環境にいる沙雪が妬ましかった」
「……私の環境が妬ましい?」
雪香の言葉に思わず笑いを漏らしてしまった。
確かに私は自由だけど、それは私には誰もいないし、何も無いからだ。
「どうしたの?」