「直樹にとってはね、でも私は終わってなかった……ずっと引きずってた」
直樹は驚いた様な顔をしていたけれど、しばらくすると柔らかな表情に変わっていった。
「……悪かった、沙雪がそこまで傷付いてるとは知らなかったんだ、でももう二度と悲しませる様な真似はしないから」
言いながら直樹は、テーブルの上の私の手を握ろうと、自分の手を伸ばして来る。
私はその手を振り払った。
「沙雪?」
眉をひそめる直樹を、真っ直ぐ見据える。
「直樹は雪香を何より大切にしてると思ってたのに……こんなあっさり諦めるなんてがっかりした」
「あっさりって……雪香が俺にした仕打ちを思えば当然だろ?」
「普通に考えれば婚約解消は仕方ないかもね、でもすぐに私のところに来たっていうのには、呆れた……直樹への未練も無くなるくらい嫌いになった」
直樹の頬が紅潮する。怒りを感じているのが伝わって来る。
「お前のそういう可愛げの無いところが嫌いだったんだよ」
突然の攻撃に私は一瞬黙ってしまった。直樹は勢いを得たように言葉を続ける。
「そんな性格だから、実の妹の雪香にも嫌われるんだよ」
私は目を見開いた。雪香は私を嫌っていた? どうして?
迷惑をかけられてるのは私の方だと言うのに。
呆然とする私に、直樹はまくし立てる。
「それから俺が雪香に夢中になった様な言い方してたけど、先に言い寄って来たのは雪香の方だからな」
「嘘!」
思わず高い声を上げる私に、直樹は勝ち誇った様な笑みを浮かべた。
「嘘じゃない、始まりは雪香からだ」
信じられなかった。まさか雪香から直樹に近付いていたなんて……。
「俺を悪者にしたみたいだけど、元はといえば雪香のせいだ」
「……だから自分は何も悪くないって言うの? たとえ誘ったのが雪香だったとしても応じたんだから同罪でしょ?」
直樹の顔が強張った。
「どっちが誘ったかなんてもうどうでもいい……直樹に裏切られて、いつまでも引きずっていたけど、そんな気持ちも無くなった。嫌いにならせてくれてありがとう」
私は立ち上がり、直樹を見下ろした。
「さよなら、直樹」
振り返らずに店を出て、早足で進む。直樹から少しでも遠ざかりたかった。
強気で別れを告げて来たものの、頭の中は混乱しているし、胸が痛かった。
直樹は驚いた様な顔をしていたけれど、しばらくすると柔らかな表情に変わっていった。
「……悪かった、沙雪がそこまで傷付いてるとは知らなかったんだ、でももう二度と悲しませる様な真似はしないから」
言いながら直樹は、テーブルの上の私の手を握ろうと、自分の手を伸ばして来る。
私はその手を振り払った。
「沙雪?」
眉をひそめる直樹を、真っ直ぐ見据える。
「直樹は雪香を何より大切にしてると思ってたのに……こんなあっさり諦めるなんてがっかりした」
「あっさりって……雪香が俺にした仕打ちを思えば当然だろ?」
「普通に考えれば婚約解消は仕方ないかもね、でもすぐに私のところに来たっていうのには、呆れた……直樹への未練も無くなるくらい嫌いになった」
直樹の頬が紅潮する。怒りを感じているのが伝わって来る。
「お前のそういう可愛げの無いところが嫌いだったんだよ」
突然の攻撃に私は一瞬黙ってしまった。直樹は勢いを得たように言葉を続ける。
「そんな性格だから、実の妹の雪香にも嫌われるんだよ」
私は目を見開いた。雪香は私を嫌っていた? どうして?
迷惑をかけられてるのは私の方だと言うのに。
呆然とする私に、直樹はまくし立てる。
「それから俺が雪香に夢中になった様な言い方してたけど、先に言い寄って来たのは雪香の方だからな」
「嘘!」
思わず高い声を上げる私に、直樹は勝ち誇った様な笑みを浮かべた。
「嘘じゃない、始まりは雪香からだ」
信じられなかった。まさか雪香から直樹に近付いていたなんて……。
「俺を悪者にしたみたいだけど、元はといえば雪香のせいだ」
「……だから自分は何も悪くないって言うの? たとえ誘ったのが雪香だったとしても応じたんだから同罪でしょ?」
直樹の顔が強張った。
「どっちが誘ったかなんてもうどうでもいい……直樹に裏切られて、いつまでも引きずっていたけど、そんな気持ちも無くなった。嫌いにならせてくれてありがとう」
私は立ち上がり、直樹を見下ろした。
「さよなら、直樹」
振り返らずに店を出て、早足で進む。直樹から少しでも遠ざかりたかった。
強気で別れを告げて来たものの、頭の中は混乱しているし、胸が痛かった。