キツい口調で責めると、直樹は落ち着きがなくなった。

「雪香が駄目になったからって私に戻って来ようなんて、そんな都合いい事何で平気な顔して言えるわけ!?」

 言葉にしてしまうと、更に感情が高ぶっていき、抑えられなくなっていた。

「直樹、雪香が本気で好きだったんじゃ無いの?!」
「お、おい、落ち着けよ」

 叫ぶ私を、直樹は周りの目を気にしてか必死に宥めようとする。

「無理に決まってるでしょ?」
 
 直樹を睨みつけて言い返しながらも、私は落ち着きを取り戻そうと深く息を吐いた。
 直樹は気まずそうに言う。

「ごめん前置きも無く話して……そんなに驚いて怒るとは思わなかったんだ」

 その台詞に、私は思わず笑いそうになってしまった。ここまで人の気持ちが解らない人だっただろうか。
 つき合っている時は、優しいところが好きだったのに、今は優しさの欠片も感じられない。

「怒らないと思ったって……そう言う直樹が信じられない、頭おかしいんじゃないの?」

 酷薄に笑って言うと、直樹はムッとしたように顔をしかめた。

「おい、こっちが大人しくしてるからって調子に乗り過ぎじゃないのか?」

 憎々しげに私を睨んで来る直樹を見ていて、気が付いた。
 直樹は復縁したいと言っているけど、私を好きな訳じゃない。
 ほんの少しの思いやりすら感じられない言動から明らかだ。

「ねえ、直樹は何で私とやり直したいの?」

 私はさっきまでとは、打って変わって落ち着いた声で尋ねた。

「え?」
「だから、何で私とやり直したいの?」

 ポカンとした表情で見返して来る直樹に、再度尋ねた。

 「……それは、良く考えて、沙雪と別れたのは間違いだったと気付いたからで……」

 自信の無さそうな声を出す直樹に、私は失望してため息を吐いた。

「本当は違うでしょ、私なんて好きじゃ無いけど、雪香と結婚出来ないから仕方なくでしょ? それか破談になったのを誰かに知られるのが嫌だから、私と結婚しようってわけ?」

 図星だったようで、直樹が息をのむのが分かった。
 胸が強く痛む。まだ傷つく自分が嫌だ。

 私は未だ残っている未練を捨てる為、プライドを捨てる覚悟を決めた。

「……私、直樹が雪香を選んだ時、言葉に表せない程ショックだった」

 別れを告げられた時言えなかった想いを、今口にした。

「え……何だよ、急に……それはもう終わった話だろ?」

 直樹は困惑した様子で私を見た。