少し前に、蓮に頼りすぎない様にしようと決心したばかりなのに、もう気持ちが揺らいでしまいそうだった。


 ミドリと会ってから、一週間が過ぎた。
 今のところ雪香達が見つかったという連絡は無く、私は変わりない生活を送っている。
 
あの日ミドリから聞いた話は、その日のうちに蓮に話した。
 蓮はかなり驚いていたし、ミドリの言い分に納得していなかった。 
 彼の性格を考えると、直接ミドリに話をしに押しかけている可能性がある。
 でも私には何の報告も無かったし、私からも聞いていない。
 気にならないと言ったら嘘になるけれど、これ以上雪香の問題に深入りしない方がいいだろうから。

 ミドリから言っていた通り、雪香が戻れば私の環境は変わる。
 今は何かと関わって来る蓮も私に構っている暇はなくなるだろう。
 だから私は雪香たちを気にするより、自分の今度についてしっかり考えなくては。先延ばしにしていた転職に本腰を入れて頑張ろう。
 
 とは言え、なかなか思うようにはいない。

「……はぁ」

 仕事後にアパートの部屋で仕事の検索をしていた私は、憂鬱な気持ちになり溜め息を吐いた。
 求人サイトをくまなく見ても応募したくなるような求人は一つも無い。
 ときどき有っても、応募資格がなかったりで、エントリーすら難しい状況だ。
 早く正社員になって、安定した身分を得たいのに。
 
 気分転換にキッチンで紅茶を入れて、一息ついていると、微かにクラッシックの音楽が聞こえて来た。
 三神さんが、また聴いているようだ。
 最近は以前のように、大音量ではなから害はないけれど、いつも同じ音楽……しかもクラッシックということが気になる。
 この曲は三神さんにとって何か意味が有るのだろうか。
 今度、何ていう曲なのか調べてみようかな。
 三神さんとの部屋を遮る壁に目を遣りながら、ぼんやりと考えていた。


 それからも仕事を探していたけれど、理想の仕事は見つからなかった。
 がっかりしながらも、ある程度妥協して数社に申し込みをしては返事を待つ。
 そんなある日、久しぶりに直樹から連絡が来た。
 スマートフォンが着信を告げるものの、私はすぐに出られなかった。
 直樹には、雪香の失踪に関して新たな情報が入ったら知らせると約束していた。
 でも判明した事実は、婚約者である直樹にとっては最悪だった。