再会後、何度か一緒に食事をしたけど気付かなかった。
 子供の頃は食べてたような気もするけど、蓮が言うなら間違い無いんだろう。
 私より蓮の方が、ずっと雪香と親しかったんだから。そう言えば……。

「ねえ、さっき途中だった雪香の義父について教えて」

 蓮は顔を曇らせながら話し始めた。

「雪香と義父の関係は上手くいってなかった。というか最悪だったんだ」
「……え?」

 予想外の発言だった。
 教会で消えた雪香の身を、義父はとても心配して平然としている私を嫌悪していた。
 それらを思い出すと、関係が悪かったなんて思えない。

「香川さんは厳しい人だから、雪香もおばさんもかなり気を使って生活してたんだ」

 雪香の義父が厳しいというのは、数回しか会った事の無い私も感じていた。
 威圧的で冷たくて……でもそれは私に対してだからで、母と雪香には違うのかと思っていた。

「じゃあ……雪香は自由に暮らしていた訳じゃないの?」

 蓮は真顔で頷いた。

「雪香がそれなりに自由になったのは、ここ一年位だ。それ以前は香川さんの干渉が強くて父親の決めたルールに縛られた生活だった」
「ルール?」
「帰宅時間、交友関係、素行や成績、全て厳しく管理されていた」

 それでは、自分の意思なんて何も無い。私には想像出来ない生活だった。
 雪香は何不自由なく生活していたと思っていたけれど、実は違っていた。
 裕福でお金に困ってなくても、自由がなかった。
 それはどれ程の苦痛だったんだろう。

 十年ぶりに再会した雪香は、美しく輝いて見えた。嫉妬してしまう程、幸せそのものに見えたのに……。い
 見えていなかった雪香の本当の姿を初めて知り、私は戸惑い言葉を失った。

「それから香川さんは、子供の頃から雪香に手荒な真似をしていた」
「え?!」

 少しの沈黙の後続けられた蓮の言葉に、私は驚き声を上げた。

「虐待されていたの?」

 口に出しながらも、信じられない思いだった。だって雪香の側には母がついている。

「いや、義父はいつも躾だって言ってたそうだ。実際発言の筋は通っていたけどあれはやり過ぎだった」
「雪香が怒られてるのを見た事あるの?」
「ああ……初めて見た時は驚いた。ただ成績が下がったってだけなのに、異常な怒りに見えた」

 蓮は憂鬱そうな表情で答える。

「怒る理由がちゃんと有るから、母も止められなかったの?」