しつこく同じ質問をして来た蓮に、私はうんざりして溜息を吐いた。。

「雪香の話に決まってるでしょ」

 私が歩き始めると、蓮も当たり前のように付いて来る。

「雪香の何を話した?」
「協力して雪香を探そうって話をしただけ」

 なぜ、尋問のようになことをされないといけないのか。

「本当に、それだけか?」
「どういう意味?」
「佐伯直樹と随分親しく見えた。妹の婚約者って関係だけには見えなかった」

 私は足を止め蓮をじっと見つめた。もしかして、私と直樹の関係を知らない?
 雪香とかなり親密そうだから、事情は当然知ってるものだと思っていたけど。
 蓮の様子をみる限り、わざと知らないふりをしているようには見えない。
 でもどうして、雪香は蓮に話さなかったのだろうか。

「ねえ、昨日私と雪香の仲が良くないことを知ってるような口振りだったけど、その理由は聞いているの?」

 小さな反応も見逃かさないように、蓮を見据える。

「は? 先に質問に答えろよ」
「先にそっちが答えたら、答える」

 即答した私に、蓮は鋭い目を向けてきた。
 それでも、言い合っても時間の無駄と判断したようだ。

「具体的な理由は聞いて無い。ただ長く離れていた双子の姉にひどく恨まれていると悩んでいて、最近は塞ぎ込む時間が多かった」
「どうして理由を聞かなかったの?」
「一度聞いたけど、雪香は言葉を濁した。言いたく無さそうだったから、追求しなかったんだ」

 確かに、理由なんて言いたく無いに決まってる。
 雪香が蓮を気に入っていたのは確かだし、マイナスイメージを与えるような事実は隠しておきたかったのだろう。

 なんてずるい雪香。

 薄い笑いを浮かべる私を、蓮は怪訝な表情で見た。

「何がおかしいんだ?」
「……別に」

 私は蓮をチラッと横目で見ながら、短く答えた。

「おい、いい加減に聞いた事に答えろよ」

 忍耐も限界に来たのか、蓮は低い声を出した。
 ちょうどアパートの近くのコンビニエンスストアに着いたところだったので、私は足を止め蓮に向き合った。

「昨日から思ってたけど、そもそも雪香とはどんな関係なの? 直樹はあなたを知らないと言ってたけど、婚約者に言えないような関係?」
「お前……いい加減にしろよ、くだらないこと言ってないで早く答えろ」

 本気で怒ったのか、蓮は凄みを見せる。鋭い目で睨まれ背筋が冷たくなる。それでも、私は引き下がらず強気で蓮を見返した。