「ええと……もしかして誤解を与えちゃったかと心配になって。私の言い方まるで告白みたいだったし……蓮に側に居て欲しいって言ったのは本心だけど、変な下心は無くて……」

 弁解するように言う私に「沙雪、下心って……」とミドリが突っ込む。
 蓮は相変わらず怖い顔で仁王立ちしたままだ。

「……蓮?」

 恐る恐る呼びかけると蓮はハッとした後に、顔を赤くして怒鳴った。

「そんなのいちいち言われなくたって分かってるに決まってんだろ?! 俺はそんな勘違い野郎じゃ無いからな!」
「あ……そうだよね、ごめん変なこと言って」

 正直言って、最強の勘違い野郎だから不安になってたんだけど……口にする勇気はもちろん無い。

「もうくだらないこと言うなよ?!」

 素っ気ない蓮の言葉に、私はもう一度ごめんと謝った。
 ……本当に余計な気を回し過ぎてしまった。
 そんな事を考えていると、ミドリが冷めた目を蓮に向けながらボソッと呟いた。

「悲惨だな」
「あ?! ミドリお前……」

 小声だったけれど、蓮の耳にはしっかりと届いていた様で、鬼のような顔をしてミドリに詰め寄ろうとする。
 けれどミドリはそれを無視して、私に爽やかな笑顔を向けて来た。

「そろそろ行こうか」
「え?! うん……」

 いいのかな?

「……蓮も行く?」

 一人置いて行くのも悪い気がして尋ねると、蓮はふてくされた様にそっぽを向いた。

「放っておいていいよ、行こう」

 ミドリに手を引かれ、戸惑いながらも私達は病室を出た。
 結局蓮は、散々文句を言いながらも着いて来て、ミドリの車に真っ先に乗り込んだ。

「……自分の車はどうするんだよ?」

 後部座席にドカンと座った蓮に、ミドリは眉をひそめながら言う。

「お前に関係無いだろ? 」

 愛想の欠片も無く言う蓮に、ミドリは溜め息を吐いてから私を見た。

「沙雪も乗って?」
「あ……うん」

 ミドリが開けてくれたドアから身を滑り込ませようとすると、蓮の鋭い声が響いた。

「おい、こっち乗れよ!」

 蓮は自分の隣のシートに目を遣りながら言う。

「俺は運転手じゃ無いんだけどな」

 ミドリが少しムッとしたように応える。私はどうしたものかと悩んだ末助手席に座った。
 ミドリの言う通り、二人が後部座席って何だかおかしな気がしたから。
 文句を言い続ける蓮を無視して、ミドリはゆっくりと車を発進させる。
 運転しながら、私に話しかけて来た。