決意を込めて蓮を見る。蓮は視線を上げて見返して来た。

「それも分かってるし、もう無理強いはしない」
「じゃあ……」

 もう私には会わない方がいいんじゃ無いの?
 そう言おうとしているのに、どうしても口に出せない。

「無理に和解させようとして悪かった。雪香の話を鵜呑みにして和解は沙雪の為になると思って暴走し過ぎた」

 雪香は蓮にどんな話し方をしたのだろう。
 私に話した内容に嘘は無いと思うけど、蓮には嘘を言ったのだろうか。

「以前ミドリにも言われたのにな、思い込みが激しいって……少しも成長出来てなかった」
「……雪香が嘘を言ったの?」

 蓮は困ったような顔をした。

「嘘って言うより、肝心なことを黙ってた。ミドリが沙雪が消えたって血相変えて来た時隣の部屋の話になって、その流れで三神の話になった。その時一緒に居た雪香の様子が変だったから問い詰めたら泣きながら全て話したんだ」

 雪香の気持ちは少しは分かった。きっと、蓮に間違った行動をしていた自分を知られたくなかったんだろう。
 恋愛感情が無くなっても、雪香にとって蓮はいつまでも大切な人なのだろうから。

「だから戻って来たのは、雪香とのことをどうこう言うつもりじゃなくて……ただ沙雪の側にいたいからだ」
「……え?」

 思ってもいなかった蓮の言葉に、私は目を見開いた。

「お前、さっき勝手に別れの挨拶みたいなこと言い出しただろ。ムカついたけど雪香もかなり動揺してたから、とりあえず送ってから文句言おうと思った」

 ……文句って。

 私を睨むようにしながら言う蓮に、どう反応すればいいのか分からない。
そんな私に、蓮は早口でまくし立てた。

「前から思ってたけど、お前勝手に決めて、サヨナラとか言うなよ。何が今までありがとうだよ……ふざけんな!」

 その剣幕に圧倒されて、私はただ呆然と蓮を見上げる。

「お前はそんなに簡単に別れられんのかよ? 雪香と離れるから俺ともはいサヨナラって、なんだよそれ!」

 自分で言いながら興奮してしまっているのか、蓮の声は段々大きくなっていく。

「……蓮、落ち着いて。私は……」
「雪香と俺は別の人間だろ? なんで一緒に考えるんだよ?!」

 今までの態度を見れば、二人をセットで考えてしまうのは仕方ないと思うけど。
 そんな事を思いながらも、蓮を止めようと私も声を大きくする。

「蓮、聞いて! 私は……」
「沙雪は俺とも離れたいのか?!」