細身のミドリのどこにこんな力が有るのかと、唖然としてしまう。
 三神さんはその隙に、よろよろと窓際に逃げて行った。
 蓮は相変わらず三神さんを睨んでいたけれど、多少は落ち着いた様に見えた。

 ミドリは、二人が離れたのを見て直ぐに私のところにやって来た。

「沙雪、大丈夫か?」

 心配そうに言いながら、足の拘束を解いてくれる。

「ミドリ……ありがとう」

 数日ぶりに解放されて感無量になりながら言うと、ミドリはその綺麗な顔を歪めた。

「ごめん……昨日無理にでも踏み込んでたら……」
「ううん。探してくれてありがとう……本当に嬉しかった」

 そう言いながら立ち上がろうとしたけれど、弱っている為か足に力が入らなかった。

「沙雪?……これは…酷いな」

 ミドリは私の様子を見て顔をしかめながら、助け起こしてくれた。

「おい、どうしたんだよ?!」

 蓮はぐったりとミドリに寄りかかる私を見て、顔色を変える。

「……ちょっとフラフラするだけ、大丈夫」

 本当はちょっとどころじゃ無いけれど、これ以上騒ぎを大きくしたく無い。

 そんな私の気持ちは通じない様で、蓮は激高してしまった。

「顔以外もどっか殴られたのか?! あいつ!!」

 再び三神さんに向かって行こうとする蓮を、ミドリが鋭い声で止めてくれたので状況の悪化を防げた。


「沙雪、直ぐに病院に行こう」

 ミドリが私を心配そうに見つめながら言う。

「でも先に三神さんを、何とかしないと」

 蓮とふたりきりで残して行くのは不安過ぎる。
 ミドリは窓際の三神さんに目を向けた。

「警察に引き渡すしかないな、このままじゃ鷺森が何をするか分からないし」

 蓮は不快そうに顔をしかめた。

「俺が何するって言うんだよ」

 ミドリは三神さんのボロボロになった姿に目を遣り、呆れたように言った。

「既にやり過ぎてるじゃないか……本当にカッとしやすいな。よく調べてからって何度も言っておいたのに勝手に突入するし」
「お前こそ慎重過ぎて失敗しただろ?  昨日乗り込んでたら沙雪は無傷だったかもしれないのに。 お前がウジウジノロノロしてるから沙雪が殴られたんだよ」
「それは……」

 蓮に言い返されて、ミドリは言葉に詰まり私を見た。

「俺が躊躇いながらも思い切って突入しなかったら、沙雪は危なかったんだよ!」

 蓮はかなりの迫力で、ミドリに追い討ちをかける様に言う。