「あの時、妹の話を聞き入れていればこの事態は避けられたかもしれないのにね」
「……え?」

 どういう意味? やっぱり三神さんは雪香と関係あるというの?
 三神さんは答えを寄越さないまま、私を置き去りにして部屋を出て行った。
 
 玄関の扉が閉まるとすぐに、私は足枷を外しにかかった。
 早く何とかして脱出しないと……。
 春先とはいえ、まだ寒さは厳しい。こんな暖房も無い部屋でコートも無しに一晩過ごせるはずない。
 
 引っ張ったり、力任せに取ろうとしたけれど、やはり頑丈でビクともしない。
 無駄とはおもいつつも、何か道具は無いかと部屋の中を見回した。
 だけど部屋の中はガランとしていて、やはり道具になりそうな物は何も無い。

 私は落胆のあまり顔を歪めた。本当にここから出られないのだろうか。
 こんな目に遭う程、私は酷いことをしたとは思えない。
 三神さんは、精神がおかしくなってるのだろうか。
 失望で体から力が抜ける。私は冷たい床に横たわった。

 寒さに縮こまりながら、様々なことを考えていた。
 この部屋に閉じ込められていたという三神早妃さん。
 彼女は三神さんの妹なのだろうか。今はどうしているのだろう。
 
 辛い目に遭ったのは確かだろうけど、大分前に引っ越したんだから今は解決しているんじゃないの? それなのに、何故三神さんは私を恨むのか。
 憎むなら、彼女に実際危害を加えた相手が筋なのに、どうして私を……。
 ただ隣室の異変に気付かなかっただけで、ここまでされるのはおかしい。
 
 他に何か原因が有るのだろうか……そういえば、三神さんと私は以前会っていると言っていた。
 その時何か有ったのだろうか。
 それから、雪香の話を聞いておけば、この事態を回避出来たと言っていたけれど、どういう意味なのか。
 雪香は私が三神さんに恨まれてると知っていた?
 
 いくら考えても答えは出ない。
 このまま放置されたら、私はどうなってしまうんだろう。
 寒さで手足の感覚が無い。こんな状態がずっと続いたら……。
 
 私がこんな目に遭っていると、気付いてくれる人は誰もいない。
 その事実に胸が痛くなる。
 雪香と蓮を煩わしいと感じて、二度と関わるなと言い拒絶した。
 けれど、私を思い出しどんな事情にしろ気にかけてくれるのは、あの二人だけだった。それなのに、私は自ら二人の手を振り払ってしまった。
 一人で大丈夫だと思っていた。