「あ……」

楽しそうな表情を浮かべていたチビが、地面に落ちたそれを見て悲しそうな顔をする。

暗い夜道で何が落ちたのかよくわからなかった俺は、黙ってしゃがんだ。

そして地面に落ちた何かを拾い上げる。

本の間から滑り落ちたのは、シロツメクサの花と三つ葉のクローバーだった。

押し花にでもしようと思ったのか、中途半端な感じで潰されている。


「お前の?」

拾い上げたシロツメクサの花とクローバーをチビの方に差し出す。

けれど、押しつぶされて茎が弱くなっているそれらは、チビの目の前でコクンと項垂れるように頭を下げた。


「ママに…あげようと思ったの。ママ、この白いお花が好きだから」

チビは俺が差し出した花とクローバーを受け取る代わりに、俯いてぼそりと呟いた。

そういえば、こいつは前に住んでいた家のバス停の近くでウロウロしていたところを江麻先生に発見されたんだっけ……


もしかしてこれを母親の入院している病院に届けようとでも思ったのか。