「うん、大丈夫。行きたい!」
そこまで言って、私はふと、以前真斗さんに言われたことを思い出した。
「ねえ、寄り道してもいい? 根津駅の近くに美味しいたい焼き屋さんがあるって、知り合いに聞いたの」
「たい焼き? いいね。寒いから温かいものを食べたい」
冷えた手を擦り合わせていた亜美ちゃんはパッと表情を明るくする。
その後、私達は不忍通り沿いにある真斗さんイチ押しのたい焼き屋さん『根津のたいやき屋』でたい焼きを買い、それを片手に周辺散策を楽しんだのだった。
もちろん、ここのたい焼きが大好きだと言っていた真斗さんにもお土産に買っておいてあげた。
◇ ◇ ◇
夕方になってつくも質店に行くと、そこにはちょっと懐かしい人がいた。
太ももの辺りまで隠れる黒いダウンの下からは細い足が覗いており、足元はハイヒールがきまっている。背中の真ん中まで伸びた茶色い髪の毛先はクリンとカールがかかっていた。そして、肩からかけている鞄の端っこには白い文鳥がちょこんと乗っていた。
「こんばんは、ミユさん」
私が背後から声をかけると、その女の人──ミユさんは驚いたように振り返った。
「あら。梨花ちゃん!」
表情を明るくしたミユさん。胸元には今日も、あのアルハンブラが輝いている。そして、ミユさんの正面のカウンターの上には大量の小箱や鞄などが置かれていた。
「買い取り希望でいらしたんですか?」
私は怪訝に思い、カウンターの上を眺めながらミユさんに聞く。
以前に真斗さんから、ミユさんは数ヶ月置きに買い取り希望で商品を持ち込んでくるとは聞いていた。
けれど、前回ミユさんがつくも質店にお客さんから貰った品物を売りに来たのは十月の半ばだったので、随分と早い。まだ二カ月弱しか経っていない。
それに、カウンターの上には前回よりはるかに多い物量の品々が並べられていた。
「うん、そうだよ」
「今日は随分と多いんですね。もしかして、少し早めのクリスマスプレゼントでお客さまに頂いたとか?」
「違う、違う」
ミユさんは片手を軽く振ると、楽しそうに笑う。そして、意味ありげにこちらを見つめた。
「私ね、お店辞めたの。だから、私にはもう必要ない物を処分しに来た」
「辞めた?」
そこまで言って、私はふと、以前真斗さんに言われたことを思い出した。
「ねえ、寄り道してもいい? 根津駅の近くに美味しいたい焼き屋さんがあるって、知り合いに聞いたの」
「たい焼き? いいね。寒いから温かいものを食べたい」
冷えた手を擦り合わせていた亜美ちゃんはパッと表情を明るくする。
その後、私達は不忍通り沿いにある真斗さんイチ押しのたい焼き屋さん『根津のたいやき屋』でたい焼きを買い、それを片手に周辺散策を楽しんだのだった。
もちろん、ここのたい焼きが大好きだと言っていた真斗さんにもお土産に買っておいてあげた。
◇ ◇ ◇
夕方になってつくも質店に行くと、そこにはちょっと懐かしい人がいた。
太ももの辺りまで隠れる黒いダウンの下からは細い足が覗いており、足元はハイヒールがきまっている。背中の真ん中まで伸びた茶色い髪の毛先はクリンとカールがかかっていた。そして、肩からかけている鞄の端っこには白い文鳥がちょこんと乗っていた。
「こんばんは、ミユさん」
私が背後から声をかけると、その女の人──ミユさんは驚いたように振り返った。
「あら。梨花ちゃん!」
表情を明るくしたミユさん。胸元には今日も、あのアルハンブラが輝いている。そして、ミユさんの正面のカウンターの上には大量の小箱や鞄などが置かれていた。
「買い取り希望でいらしたんですか?」
私は怪訝に思い、カウンターの上を眺めながらミユさんに聞く。
以前に真斗さんから、ミユさんは数ヶ月置きに買い取り希望で商品を持ち込んでくるとは聞いていた。
けれど、前回ミユさんがつくも質店にお客さんから貰った品物を売りに来たのは十月の半ばだったので、随分と早い。まだ二カ月弱しか経っていない。
それに、カウンターの上には前回よりはるかに多い物量の品々が並べられていた。
「うん、そうだよ」
「今日は随分と多いんですね。もしかして、少し早めのクリスマスプレゼントでお客さまに頂いたとか?」
「違う、違う」
ミユさんは片手を軽く振ると、楽しそうに笑う。そして、意味ありげにこちらを見つめた。
「私ね、お店辞めたの。だから、私にはもう必要ない物を処分しに来た」
「辞めた?」