こんな景色、昔見たことがある気がする。あれは……家族旅行で行った京都の伏見稲荷神社だ。
「千本鳥居だね。後でくぐってみようよ」
「うん、そうだね」
そんなことを話ながら、私達は境内へと進む。
十二月の中旬という季節柄と平日なこともあり、ここを訪れる人はまばらで境内は落ち着きはらっていた。遅めの七五三をしたのか、袴姿の幼稚園児くらいの子供を連れた家族連れとすれ違った。
社殿の前に立つと、亜美ちゃんと横に並んで二礼・二拍手・一礼。
目を閉じて、顔の前で手を合わせる。
『素敵なことがありますように』とお願いした。
お参りが終わるとすぐ横のおみくじを引く。一〇〇円を入れて折りたたまれた紙を一枚取り出す。この紙を開く瞬間は、いくつになってもドキドキする。
「やった! 大吉!」
「え、いいな。どれどれ──やったー! 私も大吉だったよー」
社務所から少し離れたところで亜美ちゃんとハイタッチで祝福する。
おみくじなんて気休めでしかないと思っていたけれど、シロが付喪神様だというなら本当に八百万の神々もいるのかもしれない。なら、神様にお参りしたあとの大吉はきっと当たっていそうじゃない?
その後、社務殿の反対側に進み、先ほど見た入り口とは反対側から千本鳥居を通り抜けた。
実際に通り抜けると思ったよりも小さな鳥居で、女の私が屈まずに通り抜けられるギリギリの身長。きっと、男の人なら屈まないと頭をぶつけてしまうだろう。
真っ赤なトンネルは、非日常を呼び起こす。
このトンネルを抜けたら、全く違う世界だったら? もしかしたら、特別な使命を持った神様が現れて「世界を救うのを手伝ってくれ」なんて言い出すかも。実は私は伝説の陰陽師の末裔で、ひとたび筆を取って式札に走らせれば、最強無敵。そんな想像がぐんぐんと膨らんでくる。
「えーっと、これかな? 結構地味だね」
鳥居を全て抜けても、当然の事ながら異世界には行かないし、神様を現れない。代わりに、亜美ちゃんは笑顔でこちらを振り向くと、近くにあった大きな石を指さした。
「何が『これかな?』なの?」と私は首を傾げる。
「これ、『文豪の石』っていうんだって。夏目漱石とか森鴎外がお散歩ついでにここに座って構想を練ったとか」
「へえ」
「千本鳥居だね。後でくぐってみようよ」
「うん、そうだね」
そんなことを話ながら、私達は境内へと進む。
十二月の中旬という季節柄と平日なこともあり、ここを訪れる人はまばらで境内は落ち着きはらっていた。遅めの七五三をしたのか、袴姿の幼稚園児くらいの子供を連れた家族連れとすれ違った。
社殿の前に立つと、亜美ちゃんと横に並んで二礼・二拍手・一礼。
目を閉じて、顔の前で手を合わせる。
『素敵なことがありますように』とお願いした。
お参りが終わるとすぐ横のおみくじを引く。一〇〇円を入れて折りたたまれた紙を一枚取り出す。この紙を開く瞬間は、いくつになってもドキドキする。
「やった! 大吉!」
「え、いいな。どれどれ──やったー! 私も大吉だったよー」
社務所から少し離れたところで亜美ちゃんとハイタッチで祝福する。
おみくじなんて気休めでしかないと思っていたけれど、シロが付喪神様だというなら本当に八百万の神々もいるのかもしれない。なら、神様にお参りしたあとの大吉はきっと当たっていそうじゃない?
その後、社務殿の反対側に進み、先ほど見た入り口とは反対側から千本鳥居を通り抜けた。
実際に通り抜けると思ったよりも小さな鳥居で、女の私が屈まずに通り抜けられるギリギリの身長。きっと、男の人なら屈まないと頭をぶつけてしまうだろう。
真っ赤なトンネルは、非日常を呼び起こす。
このトンネルを抜けたら、全く違う世界だったら? もしかしたら、特別な使命を持った神様が現れて「世界を救うのを手伝ってくれ」なんて言い出すかも。実は私は伝説の陰陽師の末裔で、ひとたび筆を取って式札に走らせれば、最強無敵。そんな想像がぐんぐんと膨らんでくる。
「えーっと、これかな? 結構地味だね」
鳥居を全て抜けても、当然の事ながら異世界には行かないし、神様を現れない。代わりに、亜美ちゃんは笑顔でこちらを振り向くと、近くにあった大きな石を指さした。
「何が『これかな?』なの?」と私は首を傾げる。
「これ、『文豪の石』っていうんだって。夏目漱石とか森鴎外がお散歩ついでにここに座って構想を練ったとか」
「へえ」