少ない給料をやりくりして店に通い、ミユさんと親しくなろうと必死に口説いた。熱意が伝わったのか、はたまたミユさんも元々淳一さんに好意があったのかはわからないが、その後ミユさんと淳一さんは店の外でも会うようになり、いつしか交際へと発展する。
ミユさんは、綺麗で華やかなだけでなく、明るくて親しみやすい魅力的な女性だ。だから、淳一さんは何度かミユさんに、只でさえ魅力的なミユさんが多くの男性と知り合う今の仕事を「やめてほしい」と伝えたそうだ。
ミユさんが仕事に行く度に、そして誰かから贈り物をされる度に、淳一さんの中で『いつかミユさんが他の男性に取られてしまうのでは』という猜疑心と焦燥感が高まる。
けれど、ミユさんは淳一さんがその言葉を告げても曖昧に微笑むだけで、仕事を辞めてはくれなかった。
「……なんで、ミユさんは夜のお仕事を辞めなかったんですか? すごくこの仕事が好きだったとか?」
話の途中だったけれど、私はおずおずとミユさんに尋ねた。ミユさんは眉尻を下げると力なく首を左右に振った。
「ううん。この仕事が向いているというか、そこそこ人気があったっていうのもあるけど、本当の理由は別。私ね、高校卒業してすぐにこの世界に飛び込んだの。資格も学歴もなければ職歴もこれしかない私を昼間に雇って、独り暮らしができるようなお給料をきっちりくれるような会社、きっとあるわけないって思っていたの。それにね、私の同僚もお客さんと付き合い始める人は多いんだけど、長続きしないことも多いんだ。だから、この仕事を辞めて華やかさがなくなったら、淳一もすぐに私に飽きてしまうだろうって思ってた」
「そんなことないっ!」
淳一さんは声を荒らげる。
うーん、よくわからないけれどこの二人がものすごく拗らせていることはわかった。
淳一さんは膝の上に乗せた両手を、ぎゅっと握り込む。
「俺、汐里のお客さんに負けたくなくて、ネックレスをプレゼントしたんだ。『お前が貰ってくるプレゼントよりずっといいものを、俺でも買ってやれる』って言いたくてさ。後は、それをつけてくれている間は、ミユであっても汐里は俺の恋人だって示せている気がして、つまらない男の意地で」
「それが、四元さんがいつもつけている、あのアルハンブラですね?」
真斗さんの問いかけに、淳一さんは頷いた。
ミユさんは、綺麗で華やかなだけでなく、明るくて親しみやすい魅力的な女性だ。だから、淳一さんは何度かミユさんに、只でさえ魅力的なミユさんが多くの男性と知り合う今の仕事を「やめてほしい」と伝えたそうだ。
ミユさんが仕事に行く度に、そして誰かから贈り物をされる度に、淳一さんの中で『いつかミユさんが他の男性に取られてしまうのでは』という猜疑心と焦燥感が高まる。
けれど、ミユさんは淳一さんがその言葉を告げても曖昧に微笑むだけで、仕事を辞めてはくれなかった。
「……なんで、ミユさんは夜のお仕事を辞めなかったんですか? すごくこの仕事が好きだったとか?」
話の途中だったけれど、私はおずおずとミユさんに尋ねた。ミユさんは眉尻を下げると力なく首を左右に振った。
「ううん。この仕事が向いているというか、そこそこ人気があったっていうのもあるけど、本当の理由は別。私ね、高校卒業してすぐにこの世界に飛び込んだの。資格も学歴もなければ職歴もこれしかない私を昼間に雇って、独り暮らしができるようなお給料をきっちりくれるような会社、きっとあるわけないって思っていたの。それにね、私の同僚もお客さんと付き合い始める人は多いんだけど、長続きしないことも多いんだ。だから、この仕事を辞めて華やかさがなくなったら、淳一もすぐに私に飽きてしまうだろうって思ってた」
「そんなことないっ!」
淳一さんは声を荒らげる。
うーん、よくわからないけれどこの二人がものすごく拗らせていることはわかった。
淳一さんは膝の上に乗せた両手を、ぎゅっと握り込む。
「俺、汐里のお客さんに負けたくなくて、ネックレスをプレゼントしたんだ。『お前が貰ってくるプレゼントよりずっといいものを、俺でも買ってやれる』って言いたくてさ。後は、それをつけてくれている間は、ミユであっても汐里は俺の恋人だって示せている気がして、つまらない男の意地で」
「それが、四元さんがいつもつけている、あのアルハンブラですね?」
真斗さんの問いかけに、淳一さんは頷いた。