「源氏だよ。あの人、上野の辺りのキャバクラで働いているから。店の名前、なんだったかな。さっき言っていたけどすぐ忘れる。店では結構売れっ子みたいだよ。うちに売りに来るのはお客さんから貰ったプレゼントみたい」

 そう言いながら、真斗さんは今日四元さんが持ち込んだ大量の箱を指さす。私はその箱を眺めながら、眉をひそめた。

「プレゼントを売っちゃって、大丈夫なんですかね?」
「常連さん何人かに同じものを強請るらしいよ。しかも、『買って下さい』って強請るんじゃなくて『○○が可愛い』『最近○○が気になっている』みたいに自然に会話に混ぜ込ませて向こうが自発的に買ってくるように仕向けるらしい。全員が同じものをプレゼントしてくれれば、ひとつを残してあとは売れるだろ。それに、それさえ使っておけば全部のお客さんに『自分が贈ったものを使ってくれている』って思わせられるから、気持ちよく過ごしてもらえる」
「へえ! 凄い!!」

 なんという高度なテクニック! そんなこと、考えたことすらなかった。

「お前、やっぱ向いてないな。よくそれでフロアレディをやろうなんて思ったよな」

 感激に目を輝かせる私を見下ろし、真斗さんは呆れたように小さく嘆息した。
 私はうぐっと言葉に詰まる。その指摘は否定できない。