慌ててお辞儀すると女性は不思議そうに首を傾げたけれど、すぐに気を取り直したように笑顔で「じゃあ」と言って手を振った。
ガラガラと音を立てて扉が完全に閉まったことを確認し、私は足元にいたシロを抱き上げる。
「今、付喪神様がいましたね」
「だな。一年位前からいる」
真斗さんも短く同意の返事をしたので、間違いないようだ。
先ほど、女性が持っていたショルダーバックの端には、ちょこんと白い文鳥が乗っていたのだ。あんなところに文鳥が乗っているわけがないから絶対に付喪神だと思ったけれど、大当たり!
ただ、あの文鳥はフィリップのように喋ったりはせず、つぶらに瞳でこちらを見つめて首を傾げるだけだった。
「付喪神様って鳥が多いんですか?」
「いや、そんなことはない。中には人型もいるよ。俺は持ち主が好きな動物なのかなって思っていたけど、よくわからん」
持ち主が好きな動物?
確かに猫は好きだけど、私は犬も大好きなんだけどな。
なんでシロは白猫なんだろう?
うん、よくわからない。
「あの鞄についた付喪神様なんですかね?」
「いや、違う。鞄じゃなくてネックレスだよ」
「ネックレス?」
私は首を傾げる。そう言えば、先ほどの女性はお花のようなデザインの、大人っぽいけれど可愛らしいネックレスを付けていた。
「遠野さん。これデータ入力したらファイルしといて。あと、商品のサイトアップ用の写真撮って」
「あ、はい」
ぼんやりとしていたら真斗さんに一枚の用紙を渡された。受けとってみると、先ほどあの女の人が記入した紙だ。これに書かれた顧客データをパソコンに入力して、後はネットショップ用の写真やデータも作らないといけない。
「四元汐里さん……」
私はその用紙を眺め、小さな声で名前を読み上げた。これがさっきの方の名前のようだ。年齢は二十六歳、住所は東京都台東区……。職業欄には『接客業』と書かれていた。
「真斗さんはさっきの……四元さんとは知り合いなんですか?」
「よく来てくれる常連さんだよ。最初に来てくれたのは俺が高校生のときだったから、もう五、六年前かな。数か月おきくらいに来ては、あんな感じでたくさんの品物を売って行くんだ」
「ふうん。自分のこと『ミユ』って呼んでいましたけど……」
ガラガラと音を立てて扉が完全に閉まったことを確認し、私は足元にいたシロを抱き上げる。
「今、付喪神様がいましたね」
「だな。一年位前からいる」
真斗さんも短く同意の返事をしたので、間違いないようだ。
先ほど、女性が持っていたショルダーバックの端には、ちょこんと白い文鳥が乗っていたのだ。あんなところに文鳥が乗っているわけがないから絶対に付喪神だと思ったけれど、大当たり!
ただ、あの文鳥はフィリップのように喋ったりはせず、つぶらに瞳でこちらを見つめて首を傾げるだけだった。
「付喪神様って鳥が多いんですか?」
「いや、そんなことはない。中には人型もいるよ。俺は持ち主が好きな動物なのかなって思っていたけど、よくわからん」
持ち主が好きな動物?
確かに猫は好きだけど、私は犬も大好きなんだけどな。
なんでシロは白猫なんだろう?
うん、よくわからない。
「あの鞄についた付喪神様なんですかね?」
「いや、違う。鞄じゃなくてネックレスだよ」
「ネックレス?」
私は首を傾げる。そう言えば、先ほどの女性はお花のようなデザインの、大人っぽいけれど可愛らしいネックレスを付けていた。
「遠野さん。これデータ入力したらファイルしといて。あと、商品のサイトアップ用の写真撮って」
「あ、はい」
ぼんやりとしていたら真斗さんに一枚の用紙を渡された。受けとってみると、先ほどあの女の人が記入した紙だ。これに書かれた顧客データをパソコンに入力して、後はネットショップ用の写真やデータも作らないといけない。
「四元汐里さん……」
私はその用紙を眺め、小さな声で名前を読み上げた。これがさっきの方の名前のようだ。年齢は二十六歳、住所は東京都台東区……。職業欄には『接客業』と書かれていた。
「真斗さんはさっきの……四元さんとは知り合いなんですか?」
「よく来てくれる常連さんだよ。最初に来てくれたのは俺が高校生のときだったから、もう五、六年前かな。数か月おきくらいに来ては、あんな感じでたくさんの品物を売って行くんだ」
「ふうん。自分のこと『ミユ』って呼んでいましたけど……」