「ほんっとうに申し訳ありません!」

 私は深々と目の前の二人に頭を下げる。
 五分ほど前に現れたイケメンこと飯田真斗さんは、なんとこのつくも質店のご主人の息子さんだった。外出先から自宅に帰ってきたら、玄関先で見知らぬ女に『悪党』呼ばれされ、さぞかし驚いたことだろう。

「いやいや、いいよ。真斗の言い方も誤解を招くものだったみたいだしね」

 苦笑気味に頭を上げるように促すのは店長の飯田さん(父)。

「そう言わないとこいつ、胡散臭いネット販売とか利用しただろ」

 不満げに顔をしかめるのは真斗さん(息子)。

 よくよく話を聞くと、いずれにせよつくも質店では二〇歳以上の方のみお取引対象としているようで、未成年である私は質入れすることができなかったらしい。
 言われてみれば確かに店内の注意書きにはそう書かれているが、私は全く気が付いていなかった。だから、あの日質入れしに来た私が未成年だと気付いた真斗さんは、すぐに追い返すか迷ったという。

 それなのに、なぜ無事に万年筆を渡してお金を借りることができたのか。それは、ひとえに真斗さんが機転を利かせてくれたお陰だ。

「あの万年筆、大切なものだったんだろ? 質入れの説明したときに、利息を払えば取り置き延長するって言葉に異様に反応していたし。本当は手放したくないものだってことは、すぐにわかった」

 そう言いながら、真斗さんは店内を進むとカウンターへと入ってゆく。その後ろには久しぶりに会うシロがいた。ご機嫌な様子でしきりに私の足に擦り寄ってきている。

 シロだ! 私のシロ!

 抱き上げたい。
 抱き上げてスリスリしたい。けど、おかしな子だと思われるから今は我慢!

 真斗さんは私をチラリと見ると、持っていた鞄をカウンターの向こう側の畳の上に無造作に置いた。