「ちょう助くん……! 仕事終わりにごめんね、今から少し話せるかな……!?」
「え……花? どうしたの?」
そうして花は厨房に着くなり明日の仕込みをしていたらしいちょう助を捕まえると、ふっと何もない宙を見上げた。
「ぽん太さん、黒桜さん! 聞こえますか!? 今から厨房に来れませんか?」
花が呼びかけると、ポンっ!という効果音とともに、まずはぽん太が現れた。
どういう理屈なのか花も未だによくわかっていないのだが、こうしてつくも内で呼びかければ必ずふたりには花の声が届くのだ。
「なんじゃ花。まだ寝ておらんかったのか」
大きなあくびを溢したぽん太は、どうやら就寝間際だったようで大きな枕を抱えている。
「花さん、夜更かしは美容の大敵ですよ?」
続いて、ふらりと黒桜も現れた。
黒桜はまだちょう助と同じように仕事をしていたのか、いつもどおりの飄々とした様子で、花を見てコテンと首を横に傾げた。
「急に呼び出しちゃって、すみません! でも、どうしても今すぐみんなに聞いてほしいことがあって!」
はやる気持ちを押し込めながら、花は、すぅと一度だけ息を吸うと手に持っていた携帯電話の画面を三人に向けた。
「薙光さん率いる御一行様へのおもてなしについてなんですけど、デザートバイキングなんてどうでしょうか⁉」
「デザートバイキング?」
三人の声が揃った。花の言葉にキョトンと目を丸くする様も揃っていて、三人とも携帯電話の画面を覗き込んだ。
「薙光さん率いる御一行様に、こんなふうにデザートバイキングを楽しんでいただくんです!」
対して花は興奮気味に話を続ける。
「ほら、黒桜さん言ったでしょう? 薙光さんたちは宴会好きだって!」
「はぁ……。確かに、宴会好きとは言いましたが……」
「宴会が好きということは、賑やかな空間が好きってことに違いないですし、その点デザートバイキングは宴会とはまた違った賑やかな空気と、華やかさを演出できると思うんです!」
早口で言った花は、携帯電話を持つ手に力を込めた。
そうして心を落ち着かせるように深呼吸をすると、まつ毛を伏せて足元へと視線を落とす。



