「まぁ……わしからすれば、二十八になった今でも青臭いガキだがなぁ」
「え……八雲さんって、二十八歳なんですか⁉」
「なんじゃ花。八雲の嫁になる身だというのに、自分の将来の夫の年も知らなかったのか」
ぽん太の言葉に花は心の中で反論したが、言われてみれば確かに名ばかりの嫁候補だともしても、相手の年齢について考えたこともなかったというのは大問題だろう。
(落ち着いているから年上なのは納得だけど、三歳差だったんだ……)
三歳差ということは、花が大学一年生のときに八雲は大学四年生。そういえば花の父と母も、三歳差の年の差夫婦だった。
別に、だからどうというわけではないが、花は三歳差と聞くと、どうしても父と母のことを思い出してしまうので、胸中は複雑だ。
「とにもかくにも今は、薙光御一行にする最高のもてなしを考えねばならん」
再び議題を戻したぽん太は、短い腕を組んで「ふむ……」とアンニュイな息を吐いた。
対して花は、そんなぽん太の様子を眺めながら"あること"を思い出して「あっ」と小さく声を上げる。
「というか、初代の頃からつくもに仕えてるぽん太さんなら、どんなおもてなしで薙光さんたちが満足してきたか誰よりも知ってるんじゃないですか⁉」
盲点だった。
考えてみればまずは八雲よりもぽん太に、そして黒桜に確認するべき事案だったのだ。
「そりゃあ知ってはいるが、先程八雲も言っていた通り、その時代ならではのもてなしこそが、御一行の求めているものなんじゃ。だから昔のことを真似しようとしたって無理だら」
けれど花の質問に、ぽん太が再び息を吐いて瞼を閉じる。
そのぽん太の答えに、花はまたシュンとして肩を落とした。
ならばやはり、頼みの綱は黒桜が持っている宿泊者情報か──と考え顔を上げれば、黒桜は苦笑いを溢して花の思いに答えてくれた。



