いざ悠真くんをここへ呼び出したものの、どのようにして柊斗の話を持ち出したらいいか分からず、何となく世間話をしていた私たち。

一通りの会話が終わり、しばらく無言が生まれたタイミングで、悠真くんが結んでいた唇を開いた。

「……で、今日、凪ちゃん何か俺に聞きたいことがあったんじゃないっけ?」

そう言って、コーヒーに口をつけながら私を見つめる悠真くん。

聞きたいことは柊斗のことだと決まってはいるものの、どう伝えたら良いのか上手く言葉がまとまらず、唇を噛みしめて黙り込んでしまう。

悠真くんはそんな私を見て優しく微笑むと、再び言葉を繋げた。

「多分、柊斗のことだろ?」
「え……?」
「ははっ、その反応は当たりだな?」

まさかそんなにもストレートに聞かれるとは思っていなくて、思わず動揺してしまう。そんな私を見ながら悠真くんはもう一口コーヒーを飲むと、目尻をさらに落とした。

「実はさ、柊斗から聞いたんだ」
「え?何を?」

悠真くんの台詞の意味が分からず、眉間にしわを寄せて首を傾げる私。

悠真くんは、一体柊斗に何を聞いたのだろうか。その答えは、すぐに悠真くんの口から語られた。

「凪ちゃんに、自分の過去のことを話したんだって」

それを聞いて、ああ、なるほどと理解する。

悠真くんはもう既に柊斗の過去を知っていて、それを私に告げたことも柊斗から聞いていた。だから私から連絡がきた時、きっと柊斗に関することだろうと憶測を立てていたのだと思う。

「……柊斗から、この間お母さんの精神的虐待のことを聞いて。その時は、私もただ苦しくて、悲しくて。胸がきつく痛むような、なんとも言えない気持ちを抱いてたんだ」

ぽつりぽつりと話し始めた私の言葉を、悠真くんは真剣な表情で聞いてくれる。

その様子を見て安心した私は、自分の思いの丈を素直に吐き出していく。

「柊斗の役に立ちたい。柊斗のことを救いたい。そう思ってるのに、どうしてあげたらいいのか分からない」
「……うん」
「もちろん根本を解決するには、柊斗がお母さんと話す他ないと思う。でも私にも何かできることはあるはず。……前は、何も言えず、ただ柊斗に寄り添っていることしかできなかったから」

記憶に蘇るのは、数日前のこと。

柊斗に気の利いた言葉もかけることもできず、背中に手を当てそばにいることしかできなかった私。