「あ、いた。悠真とあかりちゃんも手振ってるよ。よし、行こうか」

辺りを見渡し始めてすぐにあかりと悠真くんを見つけた柊斗は、こっちを見ている二人に手を振りながら近付いていく。

私も慌てて柊斗の背中を追い、あかりたちのもとへ向かった。

「うわあ、美味しそう……。待ちくたびれてお腹ペコペコだよ」
「柊斗も凪ちゃんも、こんなにいっぱいありがとな」

よっぽどお腹が空いていたのか、目を輝かせながら袋の中身を覗く二人。その姿はまるで小さな子どものようで、私も柊斗も気が付けば無邪気に笑っている。

もう柊斗の笑顔もいつも通りに戻っていて、やっぱりあれは私の思い違いだったのだと思うことにした。

それから私たちは、花火が打ち上がる時間まで、各々の食べたいものを手に取りお腹を満たしていく。

私は焼きそばとフライドポテト、そして柊斗から唐揚げをひとつもらった。おかげで空いていたお腹はいっぱいに満たされ、食べ過ぎて苦しいくらいだ。

「ねぇ、もうすぐそろそろ花火が打ち上がる時間じゃない?」

それぞれが食事を終える頃、あかりがわくわくと心を踊らせながら言葉を放つ。その言葉に、ああ、いよいよなのか、と私の胸も期待に膨らんでいく。

私は柊斗とあかりに挟まれるように座っていて、あかりの向こう側には悠真くんがいる。そしてその悠真くんもまた、花火がすごく楽しみなのだろう、自分の腕時計を見ながらそわそわしている様子が見てとれた。

そして、それから約一分後──。

ヒュールルル……という口笛に似た音が夜空に吸い込まれていった後、バァンと盛大な音を響かせ大きな花を咲かせる花火。

いよいよ打ち上げが始まったようだ。

私は打ち上げ花火が小さな頃からとても好きだったみたいで、それは今も変わらず。今日も息を呑むように、夜空に輝く花火を見つめている。

思わず耳を塞ぎたくなるような爆裂音。一瞬のうちに大きな輪を形どった花火は、火の粉をいっぱいに散らして、ジリジリという音とともに消えてゆく。

手を伸ばせば触れられそうなその金色の粉は、まるで私たちの上に降る星のようだった。

「……綺麗」

こぼれ落ちた言葉はシンプルだけれど、けれど今の私の感情を真っ直ぐに表している。

「本当に、綺麗だね」

耳に届いたその声に左側を向けば、花火を見上げながら静かに微笑む柊斗。……その瞬間、胸が痛いほど締め付けられるような感覚に陥る。