「あかりのことは大好き、だよ」

溢れたのは、嘘偽りない、私の本音。思いの丈を吐き出したとともに、私の瞳からはほろりほろりと小さな雫がこぼれ落ちる。

誰かの前で涙を流すなんてこと滅多になかったから、泣き顔を友達の前で晒していることがとても恥ずかしい。けれどそんなことを気にする間もなく、どんどんと私の頰を伝う雫の塊。

「それでいい……。凪がそう思ってくれているなら、それだけでいいの」

必死に涙を手の甲で拭う私の耳に届いたのは、少しだけ掠れたあかりの涙声だった。私は思わず顔を上げる。

「あの日、凪から『どうして、中学の頃からずっと私と一緒にいてくれるの?』って聞かれて。その時ね、思ったんだ。凪はもしかしたら、今まで私と一緒にいたくなかったのに無理して私と付き合ってくれてたのかな、って。私のこと、本当は嫌いだったのかな、って。そう思ったら、悲しいのか苛立ちなのか、よく分かんなくなっちゃって」
「……ごめん」
「ううん。私は、ただ凪のことが大好きで、凪と一緒にいる時間が楽しくて、何を言っても笑って話を聞いてくれる、そんな凪と過ごす日々が心地よかったからさ。なんだろうな、うん、やっぱり、悲しかったっていうのが、正解かもしれない」

そうやって少し笑ったあかりだけれど、彼女の目尻からも透明な水滴が何筋も垂れていて。ああ、私はやっぱりあかりのことも苦しめていたのだと実感する。

「……本当にごめん」

私が、初めからあかりに自分の思いを話せていれば、あかりのことをこうして泣かせてしまうこともなかったのに。そう思えば謝罪の言葉しか出てこなくて、ひたすら私は心からの〝ごめん〟を繰り返す。

けれどあかりは、そんな私を見て言った。

「ううん、もう、大丈夫。凪が私のこと好きでいてくれてるって分かったから」

そう、幸せそうに微笑んで。

「凪が私のこと好きでいてくれてるんだもん。それに、私も凪が好きなんだから。負い目なんて、迷惑だなんて思わなくていい。今までの凪が不安に思ってたことや、心配に感じてたこと。全部全部、私が受け止めるから」
「あかり……」
「ゆっくりでいい。今日みたいに、凪のこと、凪の思い、ひとつひとつ大事に聞かせてほしい。凪がいつか、私に遠慮なく軽口叩ける日が来るまで、永遠に付き合うからね。覚悟しといてよね」

冗談交じりに言ったように聞こえるあかりの言葉たちだが、私の心にはちゃんと届いた。だからこそ、今、目の前にいるあかりの存在がこんなにも心強い。

「あかり、あのね……」

今なら、言えそうな気がした。