翌日の正午。私は少し早めの昼食を済ませた後、着替えとメイクを終わらせて自宅を出る。

待ち合わせは午後一時。

自分の最寄り駅から電車にさえ乗れば、後は柊斗が駅まで迎えに来てくれることになっている。

梅雨明けとなった本日は炎天で、平年よりも気温は暑くなると今朝のニュースで言っていた。

ノースリーブのシャツワンピを着て出かけた私だが、それでも地面を焼き尽くすような日差しは強く、日焼け止めを塗ってきて正解だと思う。

じわりじわりと額に浮かぶ汗をハンカチで叩くように拭いながら、私は最寄り駅を目指す。駅についてからはすぐに改札をくぐり、階段を降りてホームまで来た。

……それにしても、暑い。

梅雨の間は雨が降ることが多かったため、参ってしまうほど暑いということはなかったが、今日のような暑さは久しぶりで、柊斗のところへ着く前に私の心が折れてしまいそう。

私は視界の隅に入った自動販売機の前に立ち、百円玉を二枚を投入する。購入したのは、ミネラルウォーターだ。

キンキンに冷やされたボトルは手に持つだけで気持ちよくて、思わず私はそれを首に当てた。それだけでも涼んだような気になれるのだから、不思議だ。

そうこうしているうちに、私が乗る予定の列車が汽笛を鳴らしてホームへ到着した。

前に並んでいたおばあさんに続き乗車し、柊斗が待ってくれている駅を目指す。

スマートフォンで最近始めたお気に入りのゲームアプリをしながら、ガタンゴトンと電車に揺られること十分程度だろうか。

車掌さんのアナウンスが流れ、次の停車駅を乗客に知らせてくれる。もう、柊斗の最寄りだ。

私はゲームをやめ、スマホから視線を外へ向ける。

以前にこの電車に乗っていた時は、あかりと二人で話をしていたからあまり外の景色を眺めていなかった。でも、今日改めて窓の向こう側の世界に目を向けてみれば、確かに青く澄み切った海が見える。

ガラス越しでも綺麗なその色は、私の心を少し弾ませた。

《もうすぐ着くから、お迎えお願いします》

柊斗に簡単なメッセージを入れた数秒後、列車はスピードを落としてホームへ停まる。外に出た私は一度大きく深呼吸をすると、急いで柊斗の待つ改札を探した。