それから、私たちは隅までネモフィラ畑を見て回る。

少し奥まで歩いた先に、『ネモフィラをイメージしたジェラートがあります』という看板を見つけ、全員でそのカフェに立ち寄りジェラートを注文した。

綺麗な紫がかった青い色をしたアイスはどうやらソーダ味みたいで、形こそ普通のジェラートと変わらないものの、その上にはネモフィラをイメージした小さなラムネがいくつもまぶされている。

それはまるで空の中に溶け込んでゆく瑠璃色の花々のようで、見た目も楽しめるデザートだ。

その外観を崩したくなくて中々食べられずにいたら、あかりがそんな私を見て笑い、他のふたりもあかりに続くように楽しそうに頰を緩めた。だから私はなるべく形を損なわないように、ちまちまとアイスに手をつけ始めた。

「なあ、そういえばこの後どうするんだ?」

冷たいデザートに身体が涼みだした頃、アイスの乗ったスプーンを口に含みながら、悠真くんが首を傾げる。

「そうだなあ。とりあえず今何時だろう」

悠真くんに続くように柊斗が言葉を発し、自分の左腕に装着していた腕時計に目を移す。私も現在が何時くらいなのか気になり、アイスを頬張る手を止め、自分の腕時計を見た。……どうやら今は、午前十一時半みたいだ。

もう少し早い時間帯だと思っていたから、思っていたよりもネモフィラ畑を満喫していたようで、少し驚く。

柊斗も時間を見終えたのだろう、俯けていた顔を上げた。

「……ん。もうすぐお昼だ。みんなはこの後の予定はどう?門限とかある?」
「私は大丈夫だよ。遅くても夜の十時くらいに帰宅できれば」
「俺もだ。親父が最近優しくて、今のうちにしっかり遊んでおけよって言うんだよな。今日も何時でもいいから、警察の世話にだけはなるなって送り出された」

どうやら、柊斗、そしてあかりに悠真くんは、この後も予定が入っていないらしい。

「凪ちゃんは?」

私の予定を聞こうとチラッとこちらに視線を向けた悠真くんに、私は大きく頷き、にこりと笑った。

「もちろん。何の予定も入ってないよ」

私もあかりと同じく、夜十時くらいまでの外出なら許されている。といっても、今まで友達と遊ぶことなんてなかったから、そんなに遅くに帰宅したことはないのだけれど。

「ということは、……この後も、みんなで遊んじゃいますか」

悠真くんのその言葉に、一斉に頷く私たち。どうやらみんなの気持ちは一致していたようだ。

「でもさ、どこに行くの?もうネモフィラ畑は見て回ったし、他のところ?」

腕を組み考え込んだあかりに、柊斗が「はい、俺に考えがある」と挙手をした。