こんなにも綺麗なのだから、いくらか写真に納めておこう。そう思い、私はスマートフォンをバッグから取り出すと、カメラを開きシャッターを切った。

一枚、二枚、……十枚。遠くから撮ったり、近くから撮ったりと、様々な角度で撮影を始める。撮ってはその出来栄えを確認し、やっと自分の満足する写真が撮れたと思ったときには、他のみんなも同じようにネモフィラ畑の撮影会を始めていた。

「……ねぇ、凪」

目の前の景色をただ眺めていると、隣でネモフィラを撮っていたはずの柊斗が私の名前を呼ぶ。

「ん?」

そう言って柊斗の方に視線をやれば、柊斗は手に持っていたスマートフォンのカメラレンズを私に向け、──カシャリ、と一枚シャッターを切った。

「あ、今、私のこと撮った?」
「ん?……別に」
「嘘だよね?スマホのカメラのシャッター音、聞こえたもん」
「……いや、撮ってないよ?」

そこまで言っても笑いながらしらを切る柊斗。柊斗の悪戯な笑顔は、写真を撮ったと物語っているのと同じだ。

もう、柊斗ってば。写真を撮られるとは思ってもいなくて、ふいに撮られたものだから、私、絶対可愛くない顔してたでしょう。心の中でそう思い恥ずかしさを感じたけれど、まあ一枚だけだしいいか、と柊斗のことを許し、そっと微笑んだ。

「あ、なになに?柊斗くん、凪の写真撮ったの?私たちも入れてよ」
「そうだぜ、俺らも混ぜろよな。というか、みんなで一緒に撮ろうぜ。ほら、初めて四人で遊びにきた記念」

私たちのやり取りの一部始終を見ていたのか、いつのまにかあかりと悠真くんがこちらへ寄ってくる。……四人で写真、か。確かに記念にもなるし、いいかもしれない。

「はい、もう少し寄って」
「ちょ、あかり!こっちに詰めすぎだろ」
「悠真はうるさいなあ。ほら、撮るよ」

写真を撮影するのは、あかりの担当。あかりはカメラを内側モードにして、スマートフォンの画面を自分たちに掲げる。あかりと悠真くんが小さな口喧嘩をしているが、それももう日常の中に溶け込んできているのかあまり気にならない。

柊斗もきっとそれは同じ。私たちは目線を合わせると、クスリと笑った。

「──はい、チーズ」

あかりの声とほぼ同時に、カメラのシャッター音がなる。

どれどれ、とすぐに画像の確認を始めたあかりは、何度か写真を見直し、それからとても満足そうに笑う。

その表情から、どうやら渾身の一枚が撮れたみたいだ。

「うん、完璧。これ、あとからみんなに送っとくね。今夜、四人のグループ作って、そこで送ってもいい?」

あかりの提案に他の三人全員が大きく頷いた。