柊斗は静かに泣いているようで、私は小さな子どもをなだめるように柊斗の背中をトントンと優しく叩き、しばらくそのままで柊斗が落ち着くのを待っていた。
それから数分後、ゆっくりと私の肩を押して身体を離し、私と視線を交わらせた柊斗。互いの顔が近くにある慣れないこの状況に、心臓が絞りあげられそうなほどドキドキと疼く。
「凪、これから先も、俺と一緒にいてください」
そう言って笑った柊斗の顔は、私の大好きな穏やかな笑顔だった。その暖かな眼差しに、優しい笑顔に、私は何度助けられたことだろう。
幾千の星が瞬く夜空の下で、再び抱きしめあう私たち。
柊斗の温もりを肌で感じながら、頭上に広がる青黒い夜の空にちらりと目を移した私は、その中で一番強く光輝く星を探す。
蓮はあの日、自分は星になりたいと言った。家族を暖かく照らす星のようになって、みんなを元気にしたいと。
そして今は、私も蓮と同じことを思う。大切な柊斗を照らせる、この空の星になりたいと。
私は、自分の不甲斐なさに飲み込まれてしまいそうなとき、いつも夜空を見上げて笑っていた。そうすれば、ちらちらと光を放つ星々が、自分の思いに寄り添ってくれている気がしていたから。
……だからこそ、私もそうでありたいと願う。
暗闇の中にいても、ただ一つ強く光る星があれば、少しだけ寂しさが和らぐ気がするように。
私も柊斗にとって、そんな存在でありたい。
これから先どんな困難に襲われても、悲しみの渦の中にいても、毎日が怖くても。私がただ一人側にいるだけで、柊斗が一人じゃないって思えるような、そんな存在に。
……ねぇ、柊斗。
「この世に生まれてきてくれて、本当にありがとう」
伝えたい言葉は、そこらに溢れているけれど。今はたったひとつだけ、この言葉を送ろうと思う。
あなたがこの世に生を受けて、苦しみの中をもがきながら生きてくれて、こうして私と出会ってくれた。それは何にも変えられない、奇跡のような出来事。
柊斗の身体の温もりと、漂う優しい香りと、それから穏やかなその笑みと。それら全てが、柊斗がここで生きているということを教えてくれる。
私はこれからもその奇跡を抱きしめて、決して手放すことのないように。柊斗のことを大切にしながら生きていこうと、そう決めた。
高校二年生、夏。互いに前を向き、懸命にこの夏を突っ走って一歩大人へと成長した私たちを、この空に浮かぶ無数の星は……いつまでもいつまでも、照らしてくれていたのだった。