でもね、どんなにめちゃくちゃな母さんでも、酷い母さんでも、あの人は俺たちの母さんなんだ。それだけは永遠に変わることはない。
それに、俺には日菜がいた。だから俺は死ぬことを選ばずに、今ここで生きているんだと思う。
そうしてなんとか毎日を耐え続けて、気付けば母さんはきちんと病院に通うようになって。俺たちへの暴言もパッタリと無くなっていったけれど。
心に残った傷は癒えることはなく、ずっと俺の中にはあの地獄の日々の記憶が残っていた。
……俺ね、ずっと夜が嫌いだったんだ。
暗闇にまみれた世界は、一筋の希望の光すら見せてはくれなくて。
明日のお母さんはどんな感じなんだろうなあとか、また酷いことを言われてズタズタに傷付けられるのかなあとか。そんなことを思うと、満足に眠ることさえできなかった。
だけど、それを凪は変えてくれた。
凪と出会って、俺は夜の世界が、眠って朝を迎えることが、少しだけ楽しみになった。
明日は、凪と何を話そう。凪は、どんな顔を見せてくれるのかな。そうやって凪のことを考えるとね、不思議と俺の心から恐怖が消えていくんだ。
凪と会うことが俺の一番の楽しみであり、凪の笑顔を見ると、俺もなぜか嬉しかった。
そしてある日、それを悠真に話した時にね、教えてもらったんだ。この感情の名前を。
そして俺は、ようやく気付いた。凪にずっと、恋をしていたことに。
……俺は、凪が好きです。
凪のことを、これからもずっと守りたい。凪が嬉しい時、楽しい時、つらい時、苦しい時。どんな時でも、凪の側にいるのは俺がいい。
心の底から、そう思うから。
凪。俺に、誰かを好きになる気持ちを教えてくれてありがとう。
寄り添ってくれてありがとう。
一生抜け出せないと思っていた闇の中から、救い出してくれてありがとう。
俺はこれからも、前を向いて一生懸命に生きるよ。だから凪も、どうか頑張って。
この恋が叶ったとしても、そうでなくても。俺はこれからも、凪の一番の味方だから。
柊斗
──────