ベッドの頭側から、お父さん、私、蓮、お母さんの順番で横並びに腰かけた私たち。
目の前にある長方形の大きな窓からは、夜空が見える。窓を隔てているとはいえ、散りばめられた小さな星屑の光もしっかりと存在を放っていて、とても幻想的。窓枠を縁のように例えるなら、瞳に映る景色は絵画のようだ。
「今日のお星さまは一段と綺麗ね」
窓の外に目をやり、その光景を目の当たりにしたお母さんが、微笑みながら呟く。私もちょうど同じことを思っていたから、コクンと頷いた。
数秒ほど、黙って窓越しの夜空を眺めていただろうか。ふと、蓮が身を乗り出して口を開く。
「あのね、僕、お空できらきらしてる星みたいになりたいんだ」
突然そんなことを言い出した蓮は、私とお母さんの間にちょこんと座ったまま、点滴を刺していない方の腕を持ち上げ、窓から覗く星々を指差した。
その言葉に少し動揺しているのか、お母さんの笑顔が曇る。……それもそのはずだ。
星になりたい、だなんて、良くないことを想像してしまう。ましてやここは病院だ。蓮の発言は、私たち家族の不安を余計に煽った。
「……どうして、そう思うの?」
心を落ち着けようと何度か深呼吸を繰り返したお母さんは、なるべく動揺を表に出さないように、言葉の真意を優しく蓮に問う。
蓮はただ真っ直ぐに視線を前に向け、その瞳に夜空を映した。
「病院にお泊まりする時ね、いつもはお母さんが一緒に泊まってくれるけどね。たまに僕一人だけのことがあるでしょう?あのボタンを押せば看護師のお姉ちゃんは来てくれるけど、それでもやっぱり寂しいんだ。……でも、そんな時。病院の窓から星を見たら、元気になれるから」
そのまだ幼い横顔に、蓮の寂しさや苦しさ、病気を抱えて生きることの怖さを垣間見たような気がするのは、私の気のせいだろうか。
両親に愛されていて、何の問題もなく幸せそうに見えた蓮だけれど、それは間違いだったのかもしれないと思う。
蓮も、計り知れない寂しさと戦い、一人で空を見上げ、泣いていた日々があったのかもしれない。
……だけど、蓮は強かった。なぜならば。
「だからね、僕もお星さまみたいに、お母さんとお父さん、お姉ちゃんを元気にしてあげたい。僕がね、大好きな家族みんなにとっての、星になりたいんだ。そうすれば、僕の大好きなみんなはずっと笑顔でいられるでしょ?」
蓮は、一人で自分の殻にこもり立ち止まっていた臆病な私とは反対に、私たち家族のことを純粋に守りたいと強く思っていた。
星になりたいと口にした蓮の言葉の裏側にあった理由。
それは、自分が実際に星を見て元気をもらっていたことをきっかけに、それならば、自分も家族を元気にしたいと考えたから。そして思いついたのが、自分を明るく照らしてくれた星のような存在になることだった。……そう、私たち家族にとっての。