「うん。お互いに家族とちゃんと向き合って、ぶつかって。その結果が良いものだったらもちろんいいんだけど、もし駄目だったとしても。どちらにしても、勇気を出して前に進んだことに変わりはないでしょう?だからね、私は柊斗を、柊斗は私を。よく頑張ったねと、褒めてあげる。そのために、お互い頑張ろうよ。そして、互いが向き合えた時に、また会おう。……これが、約束」

柊斗が、この約束をどう受け取っているかは分からない。

けれど私は、柊斗も頑張っているんだと思うことができたなら、もっと今より勇気を出して前に進めそうな気がするんだ。

そして、柊斗にとっての私の存在も、そうであってほしい。私の我儘かもしれない。でも、柊斗が私の頑張る源であるように、柊斗の頑張る源もまた、私であればいいなあと思わずにはいられないんだ。

「……凪」

右隣に座っていた柊斗が、小さな声で私の名前を呼ぶ。

その声色は優しくて暖かくて、それだけでホッと安心できるようで。

「約束、絶対に叶えよう。……俺も頑張るから。──凪も、頑張れ」

暖かな日差しが差し、穏やかな風が吹くこの世界の中で、柊斗が笑った。それは、私がとても大好きな、優しく穏やかな笑顔。

応援の言葉とともに私の目の前に差し出されたのは、柊斗の大きな掌。

柊斗の瞳を真っ直ぐに見つめれば、彼はやわらかな表情を保ったまま、私がその掌を握るのを待ってくれている。

だから私は、彼の手に向かってそっと指先を伸ばす。互いに右手を寄せ合い、ようやく触れた私たちの掌。

繋がった部分から、柊斗の覚悟だったり、勇気だったり、そういったものが私にまで伝わってくる感じがした。そしてそれは私の勇気にもなり、計り知れない力となる。

それから私と柊斗は、それぞれの帰路に着く。

その間に考えることは二人ともきっと同じで、それぞれの抱える過去や気持ちに、どう向き合っていくか。けれど、それはもう誰かに何かを指図されるわけでもなく、自分で考えるしかないと思うから。