やっぱり柊斗は優しくて、いつも私や周りの人を大切にしてくれる。そしてそんな優しさに触れる度に、私はますます柊斗に恋をするばかりだ。

この思いを伝える勇気は今もまだないが、柊斗のことを好きになってよかったと、心からそう思えた。

それからというもの、互いに数分の沈黙が続く。

どんな風に話し始めればいいのかタイミングを見計らっているのだけれど、なかなか初めの言葉を口に出すことができない。

無言のままの私たちの間を、冷たい風がさらさらとただ流れていく。

公園の前の道を、部活帰りの中学生数名がわいわいとはしゃぎながら歩いている姿が見えて、その子たちを自然に目で追っていた、その時。

「……ねぇ、凪」

右隣から、私のことを呼ぶ柊斗の声が聞こえた。ちらりと柊斗の方に視線をやると、柊斗は真剣な瞳で私のことを見つめていて。ああ、話さなければいけないなあと思う。

いつまでも黙ったままでいるわけにもいかないし、何より決めたのだ。逃げてばかりいないで、自分の気持ち、そして家族に向き合うと。

「あのね……」
「あのさ」

固く閉ざしていた唇を開き、柊斗をここへ呼び出した理由を説明しようとしたのだが、私の声と柊斗の声が被ったようで、懸命に押し出した台詞が消えてしまう。

それに気付いた柊斗が、いち早く申し訳なさそうに眉を下げた。

「ごめん凪。話そうとしてくれたのに」
「ううん、私の方こそ。タイミング被っちゃったね」
「本当、タイミングぴったりだったね。ごめん」
「全然いいんだよ。柊斗は、何を言おうとしてたの?」
「……いや、凪は今日、俺に何を話したいと思ってくれたの?って聞こうと思って……。 俺から話を振った方が、凪は話しやすいかなあって」

その柊斗の言葉に、私はまた彼の優しさを見た。

……ありがとう、柊斗。いつも私のことを考えてくれて。寄り添ってくれて。

そう心の中で柊斗にお礼を伝えると、私はそっと目を閉じ呼吸を整える。

「……あのね、私が今日ここに柊斗を呼び出したのは、ある覚悟を聞いて欲しくて」

そこまで言葉にして、私は伏せていたまぶたを持ち上げた。そして再び視界に柊斗を捉える。

柊斗はとても真剣に私を見つめてくれていて、彼の唇が何かを言おうと小さく動いた。

「……凪が話したいことって、俺やあかりちゃんのこと?」

その言葉に、静かに首を横に振った私。柊斗は不思議そうな目で私を見つめるばかり。